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モノ2020.11.06

ヘルスケアリーダーシップ 白書シリーズエビデンスベースド・デザインに基づきより良い病院を建設するためのビジネスケース(1)

概論
新病院建設や大規模リノベーションは、多くの場合、CEOや病院理事会にとって経験のない大きな財政的決断となります。現在、物理的環境と、患者やスタッフの安全性や質に関するアウトカムとが関係するというエビデンスが増えています。病院リーダーや理事会は、経営管理や信任義務を負う責任上、戦略計画や投資ポートフォリオにおいて、コスト効率の良いエビデンス・ベースド・デザイン(EBD)介入を含む建築環境投資に関する決断を基本としなければならず、さもなければ、競争が激化し透明性が求められる環境の中、経済的結末に苦しむことになります。 本紙では、大規模建設プロジェクトを検討する際にリーダーが使用できるEBDツールキットを提供し、掲載する各EBD特長についてビジネスケースを評価するための投資収益率の枠組みを提案します。組織文化やプロセスも同時に変更できれば、EBD特長により患者の安全性と質を定量的に改善し、労働力募集と定着を強化し、複数年にわたり大きな投資収益を生むことができ、資本投資を最大限に生かすことができます。

本紙は、 HERD(Health Environments Research and Design Journal)のthe spring 2008 issue, Vol.1, No.3掲載記事“The Business Case for Building Better Hospitals Through Evidence-Based Design”(Blair L. Sadler, Jennifer DuBose, Craig Zimring)を翻案したものです。HERDの詳細については、ウェブサイトwww.herdjournal.comを参照ください。

ヘルスケア環境の変化
今日、病院およびリーダーは、非常に困難な、しかもしばしば相容れない多くの要求に直面しています。予想できない償還、労働力不足、コストの高騰、開示要求の増加、消費者・雇用者の期待増加、労働組合戦略の積極化です。最も重要なのは、質と安全性の改革が米国全体に広がっていることです(Institute of Medicine, 2000, 2001)。消費者、雇用者、医療保険会社は、年間数千人の患者を害し時に死亡させるシステム起因のエラーを大幅に削減するよう病院に求めています(Sadler, 2006)。
さらに、多くの病院施設は単純に寿命が来ています。いくつかの州では、耐震措置が必要で、大規模な施設最新化を余儀なくされています。国全体で一大病院建設ブームを迎えています。ヘルスケア建設部門はすでに強大ですが、2012年には総額672億ドルに成長すると見積もられています(FMI, 2008)。
このような状況の中、より良い病院を建設したり既存の病院をリノベーションしたりして、患者ケアや労働条件を明らかに改善できるまたとないチャンスが生まれています。事実、どのようなプログラムであっても、患者に対する安全性と質を改善し、スタッフに安全な労働環境を提供するための最重要ポイントが物理的環境にあることが多くのエビデンスから示されています(該当する研究の詳細については、“A Review of the Research Literature on Evidence-Based Healthcare Design” by Roger S. Ulrich, Craig Zimring, Xuemei Zhu, Jennifer DuBose, Hyun-Bo Seo, Young-Seon Choi, Xiaobo Quan, and Anjali Josephを参照ください)。総合プログラムの一環として、物理的環境は、患者の転倒や院内感染などの回避可能な事象を避けることに役立つことから、施設の新築あるいはリノベーションを計画する際に注意深く考慮する必要があります(Agency for Healthcare Research and Quality, 2007; Clancy, 2008; Henriksen, Isaacson, Sadler, & Zimring, 2007)。物理的環境はまた、収益向上やコスト回避に大きく影響し、長期的にみて重要な投資となります。

安全性と質の改善を物理的環境と関連付ける
エビデンス・ベースド・デザインは、信頼に足る研究に基づき構築環境に関する決定を行い、可能な最善のアウトカムを達成するためのプロセスです(Center for Health Design, 2008)。人々が働き患者がケアを受ける物理的環境は、数々の防止可能な院内発生事象を解決するための基本的な要素の一つです。現在の研究では、患者がケアを受け、ケア提供者が働く物理的環境が、両者に多大な影響を及ぼし、影響は定量化できることがわかっています(Joseph, 2006a, 2006b, 2006c; Joseph & Ulrich, 2007; Ulrich, Zimring, Joseph, Quan, & Choudhary, 2004; Ulrich et al., 2008)。事実、環境によっては、組織の安全性や質に関する改善課題の解決を大いに助けることにも、邪魔することにもなります(Henriksen et al., 2007)。(労働力あるいは患者ケアに環境が及ぼす影響の詳細については、“Maximizing the Impact of Nursing Care Quality: A Closer Look at the Hospital Work Environment and Nurse’s Impact on Patient-Care Quality” by Ann Hendrich and Marilyn Chowを参照ください。)

このように、質と安全性の改善を促す圧力が大きくなり、物理的環境のデザインがこの両方に影響しうるというエビデンスがある中、なぜすべての病院がエビデンス・ベースド・デザインの改革を急がない、実施しないのでしょうか。もちろんいくつかの病院は実施しています。ですが、実施していない病院にとっては、しばしば経済的理由が妨げになっているようです。


「エビデンス・ベースド・デザイン」の良い点は、ヘルスケアの変化を求める他のものとは異なり、ヘルスケアに携わるスタッフの関心と人生経験を患者の関心と人生経験に結び付ける点です。」(Don Berwick, MD, MPP, FRCP, President and CEO, Institute for Healthcare Improvement, “Transforming Hospitals: Designing for Safety and Quality” (Agency for Healthcare Research and Quality, 2007に引用)。


一時的な投資とランニング経費削減とのバランス
実際のビジネスケースの中心にあるのは、一時的な建設コストと、運営費節減や収益向上継続のバランスを取る必要性です。このバランス分析の最初の試みは2004年、ある学際的チームにより発表されました。それまでに発表されていた研究と、建設プロジェクトの中でエビデンス・ベースド・デザインを使用した医療機関の実際の経験を考察したものです。これらの多くは、ペブルプロジェクト・パートナーと呼ばれ、Center for Health Design(ヘルスデザインセンター)が主催した共同学習プログラムに参加した先駆的病院でした。このNPOは仮説のファーブル病院をデザインしました(ファーブル[寓話の意]という名前は、実際に建設されなかったことに由来します)。感染の減少、不要な患者移送の削減、患者転倒防止努力、薬剤コストの削減、従業員離職率の減少、さらにはマーケットシェア改善、寄付増加などによる運営費節減を分析した結果、有効な経営管理とモニタリングにより、運営面は年単位で継続的メリットがあり、追加的改革が健全な長期的投資になることが結論付けられました(Berry, Parker, Coile, Hamilton, O’Neill & Sadler, 2004)。要するに、より良い、より安全な病院を建設するための説得力あるビジネスケースが存在していたわけです。

エコという、ビジネスケースのもう一つの側面
患者とスタッフの安全性に注目するエビデンス・ベースド・デザインの特長に加えて、ヘルスケア環境を改善することのできる持続可能な、すなわちエコな建築特長・戦略が登場しています。これらの中には、少ない資金で、あるいは資金なしで実施できるものがあり、新しいプロジェクト検討の際には考慮すべきです。

当レポートは、4部作です。2部はこちら。

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