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モノ2020.11.13

ヘルスケアリーダーシップ 白書シリーズエビデンスベースド・デザインに基づきより良い病院を建設するためのビジネスケース(2)

エビデンス・ベースド・デザインに基づきより良い病院を建設するためのビジネスケース(1)はこちら

理論から実践へ:直面すべき課題
エビデンス・ベースド・デザインがもたらすアウトカムの改善(感染の減少、患者転倒の減少、看護師離職率の改善など)を通して回避できるコストのビジネスケースにおける影響を十分に理解するには、組織の財務諸表の中でコスト節減を推定、把握、反映しなければなりません。回避できたコストを完全に計上するには、看護師の離職率低下に伴う雇用および研修経費削減など、すべての関連コストを把握するというシステム思考が必要になります。
理論上の節約から、財務諸表に反映される実際の病院コスト節減へ踏み出すことは、実際にビジネスケースの目的を達成するための大切な成功要因です。これは、環境的変化と関連するしないにかかわらず、質の改善を目指すどんなイノベーションにも当てはまることであり、Institute for Healthcare Improvement(ヘルスケア改善研究所)の集学的チームにより最初に説明されています(Nolan & Bisognano, 2006)。財務予測に実際のコスト節減を記述することこそ、エビデンス・ベースド・デザイン投資がコスト効率の良いことを理事会に説得する上でまたとない材料になります。
具体的なエビデンス・ベースド・イノベーションの投資対効果を計算するために病院が使用することのできる一つの枠組みとして提案できるものは、次のセクションで紹介します。各組織は、最新の該当エビデンスと、検討しているイノベーションのコストと収入効果について最善の判断を行うことが必要になります。

償還環境の変化:ビジネスケースの収入面
運営コストの削減と収益向上を十分に考えるとき、エビデンス・ベースド・デザインという賢明な決断を後押しする強力なビジネスケースが浮かびます。複数年にわたるコスト節減のチャンスに加えて、償還方法を変え、質と安全性のアウトカムや比較可能な患者満足度スコアの公開報告を求める大きな動きがいくつかあり、その意味を考えることが重要です。

成果報酬
この数年間で、病院や医師への償還について根本的に新しいコンセプトが現れてきました。価値に基づく購入、あるいは成果報酬と呼ばれるもので、人々が働き患者ケアが提供される物理的環境を含めた質の改善のためのビジネスケースに重大な影響をもたらすものです。これまではメディケアの患者(Centers for Medicare and Medicaid Services [メディケア・メディケイド・サービスセンター:CMS]により運営)に焦点が当てられてきましたが、メディケイドと民間医療保険会社がこの動きに倣うと想定してまず間違いないようです。実際にすでに始めているところもあります。

National Quality Forum(全国品質フォーラム)が考える許されない深刻事象
National Quality Forum(NQF)は、大部分は防止でき、それゆえ病院で絶対に発生してはならない27の深刻事象を明らかにしました(National Quality Forum)。CMSは、償還の対象になるべきでない感染および転倒を含め、具体的な害を明らかにしました。現在詳細が上がってきている途中ですが、3年~5年のうちには、病院や医師が起こした深刻な事象については実質的に償還されなくなるでしょうが、これは道理にかなっていると思われます。消費者は、明確で比較可能なアウトカム測定基準を容易に知ることができるようになり、その情報に基づき、どこで医療を受けるかの選択ができるようになります。この先ますます消費者は、品質測定に基づき、医療保険会社が勧めるネットワークに流れます。成績の悪い病院はマーケットシェアを大きく失うリスクが出てきます。

もはや病院は自分たちのミス分を請求することはできない
透明性と公開報告のこの新しい時代、いくつかの州の病院は、自分たちの犯したミスについて、医療保険会社や患者に請求しないことを自主的に決定しています。このように政策化し、組織の評判を上げることは重要です。加えて、病院のミスと訴訟の発生が関連することは事実上説明されています(Gosfield & Reinertsen, 2005)。
いくつかの州立病院協会は、病院が起こしたミスについて請求しない方針を取っていて、この方針は間もなく標準的慣行になるかもしれません(Beaudoin, 2007)。私たちは新しい時代を迎えようとしています。悪いアウトカムに対しては患者も医療保険も支払いはしないという時代です。

患者満足度と透明性:HCAHPSがルール変更
別の新しいトレンドとして、病院での患者経験の報告義務があります。CMS、Agency for Healthcare Research and Quality(医療研究品質局)のサポートを得て、Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems(HCAHPS)調査(医療機関・システムに対する患者満足度調査)が実施されました。目的は以下の通りです。

  1. 消費者にとって重要なトピックについて、ケアの患者見通しの比較可能データを作成する
  2. 公開報告を通して、病院に対し患者ケア改善の動機付けを与える
  3. ケア品質の透明性を増すことにより公への説明責任が増す

調査は27項目にわたり、うち18項目は、病院環境の清潔さと静かさ、病院の総合格付けを含む病院での経験についての重要ポイントです(Centers for Medicare and Medicaid Services, 2007)。

この新しいトレンドの影響を報告するデータはまだありませんが、HCAHPS調査で、患者がより快適、安全、患者本位の物理的環境を持つ病院を高く評価するとの予測は妥当と思われます。そしてこのことは、患者が病院を選択する上で大きな影響を及ぼし、結果、病院のマーケットシェアと最終的な財務収益にも影響します。

HCAHPSは現在メディケア加入者に焦点を当てていますが、メディケイドも民間医療保険会社も後に続き、この種の公開報告要求は多くの病院に適用されると考えるのが妥当と思われます。

以上の4つのトレンドが明確に示すことは、良好とは言えない環境を提供して受け入れがたい臨床アウトカムを出して患者満足度スコアが下がり、マーケットシェアが下がれば、病院収入は著しく悪化するだろうということです。

当レポートは、4部作です。3部はこちら。

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