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モノ2020.12.11

ヘルスケア現場のガイドライン 遠隔医療デザインのまとめバーチャルケア(1)

内容項目
・バーチャルケアのための遠隔医療の起源と利用拡大
・遠隔医療を容易にする既存環境の役割
・エビデンス使用に基づくガイダンス内容(必要事項、推奨事項)の支持・展開


本内容は、2014~15年に評価されたエビデンスに基づき、Facility Guidelines Institute(施設ガイドライン協会:FGI)のGuidelines for the Design and Construction(設計と建築に関するガイドライン)文書(病院、外来患者、在宅)の2018年版を支持するものです。これ以降も内容は進化しています。
本まとめに記載の見解は著者の見解であり、FGIのHealth Guidelines Revisions Committee(ヘルスガイダンス改訂委員会)の公式見解ではありません。


著者:Ellen Taylor PhD, AIA, MBA, EDAC
研究所 副所長

遠隔医療では、技術だけでなく、以下の項目に対処することも必要です。
1)空間、2)プライバシー、3)音響設備、4)照明、5)凝視角、6)内部空間表面、7)サイトID、8)設備サポート

遠隔医療のまとめ

概要
世界的なパンデミック前から、米国ではバーチャルケアの成長について議論は進んでいました。ひとつには技術が進歩しどこでも使用可能になったことがありますが、それ以外に、Centers for Medicare and Medicaid(メディケア・メディケイドセンター:CMS)の償還規制がようやく技術に追い付いてきたということがあります。HIMSS Analyticsが実施した調査(2017)によれば、遠隔医療の利用は2014年の54%から2017年の71%に増加しました。今や、COVID-19の出現により、遠隔医療の爆発的増加についてこれまで以上に耳にするようになりました。患者、臨床医両方に規制免除、潜在的メリットがあるため、空前の成長を見せ、重要なことには、バーチャルケアを受け入れる(対面診療より好まれる)状況まで生まれました。あるレポートによれば、パンデミック確認後数週間で遠隔医療が4,345%増加したということです。

遠隔医療を始めようとする人向けのガイダンスは、これまで償還の規制要件や、設備の技術的仕様が中心でした。主なプログラムの目的は、アクセスのしやすさ、満足度、利便性などの患者本位のアウトカム、限られた数の医師の活用と効率改善、低コストでの治療提供、再入院の減少でした(REACHhealth, 2017)。しかしながら、遠隔医療は既存の環境で行われ、遠隔医療空間のデザインには、技術の選択や規制コンプライアンスの理解以上のものが必要です。デザインは、提供する診断や治療に必要な空間、音響設備、照明、凝視角、内部空間表面、サイトID、設備使用(保管場所、適切な換気など)をサポートするための必要条件事項に対応すべきです。

2018年、Facility Guidelines Institute(施設ガイドライン協会:FGI)のHealth Guidelines Revision Committee(ヘルスガイドライン改訂委員会:HGRC)は、遠隔医療のデザインに積極的に取り組み始め、病院・外来患者施設のためのGuidelines for the Design and Construction(設計と建築に関するガイドライン)文書のための必要条件事項と推奨事項を確立しました。2014年に複数のソースが検討され、提案の基礎として使用され、提案は2018年ガイドラインの遠隔医療空間のための基本的必要条件事項・推奨事項付録文書になりました。この中には、研究内容、発表された業界専門家意見、協会あるいは医療機関基準やガイドラインなどのコンセンサス文書が含まれました。FGIのために作成された文書と、業界紙Health Facilities Management(Taylor, 2018)の2018年の記事に基づく本まとめは、その検討結果の概説であり、次々に現れるエビデンスに基づく新しいガイダンスを示すものです。遠隔医療空間のための必要条件事項は、必ずしも医師あるいは患者の家からのオンライン診療に使用することを意図するものではなく、戦略によってはどのような設定(家をベースにする設定が増加)でも考えられます。視聴覚的プライバシーを確保するため、オープンスペースでなく部屋(room)であることが常に好ましいです。

背景
遠隔医療は新しいものではありません。遠隔医療の起源は19世紀半ば、電信、電話、テレビの開発まで遡ります(図1)。

図1 遠隔医療の進化(Revation Systems, 2017を翻案)

遠隔保健サービスの進化
1844年、サムエル・モースが電信を発明
1861~1865年、電信により医療品発注、死傷者数の連絡
1875年、ベルが電話を発明、医師は患者と遠隔で話し、指示することが可能になる
1905年、アイントホーフェンが心電図を発明、電話線を使用し遠隔地に情報を送った
1924年、Radio News誌、遠隔医療を最初に考案
1927年、ファーンズワースがテレビを発明
1964年、双方向閉回路TVを使用してNebraska Psychiatric InstituteとNorfolk State Hospitalを結んで精神科診療
1967年、Boston Logan airport medical stationが双方向マイクロ波による音声・画像を用いてMassachusetts General Hospitalと結ばれ、365日24時間体制で患者診療がなされる
1972年、NASAのSTARPAHCプログラムにて双方向マイクロ波を使用して遠隔地(AZ パパゴインディアン保護地区)医療支援を確立
1990年、バーナーズリーがワールドワイドウェブを考案
1993年、ATA確立
2003年、スカイプ登場
2013年、病院の52%が遠隔保健サービスを利用、10%以上が導入開始
2015年、モバイルヘルスケア登場、スマートフォンユーザーの62%がスマートフォンを使って健康情報収集

明確な定義に関する議論

遠隔医療と遠隔保健サービスの増加にもかかわらず、遠隔医療という言葉の定義を含め、遠隔医療を議論する際、多くの疑問、整合性のなさがいまだに浮上してきます。

2015年までに専門家はこのように言っていました。「遠隔医療が、目新しい技術革新から数々の専門領域・分野でヘルスケアの担い手となる基本的要素へ進化するのを目の当たりにするようになる」と(Wilson & Maeder, 2015, p. 219)。現在、世界規模のパンデミックの中、遠隔医療の利用は、Zoom、Skype、Facetimeなど一般的に使用可能な技術のおかげで爆発的に増えています。2020年4月に米国の多くの地域でステイホームが要請され、米国保健福祉省がみたところ、メディケアのプライマリケア診療のおよそ半分(43.5%)は遠隔医療による診療でした。緊急事態宣言前の2020年2月の数字は1%にも満たない(0.1%)ものでした(Bosworth et al., 2020)。あるオーストラリアの医療機関では(それ以前の2年間は遠隔医療技術の使用に前向きではありませんでした)、COVID-19パンデミック以前、少なくとも1回遠隔医療診療を実施した診療科が23だったのに対し、パンデミック宣言後の2020年4月には、47の診療科に増加しました(Schulz et al., 2020)。別の米国の医療機関では、不急の診療が1日95件から4,209件へ増加しました。4,345%の増加率です(Mann et al., 2020)。これらの多くは、在宅している患者(および医師)の診療であり、受診機会を増やし、フィジカルディスタンスを取ることにより感染症のリスクを軽減し、個人防護具の節約になりました(Hare et al., 2020)。

この状況は、COVID-19以前に報告されていた利用状況とは全く異なります。2017 HIMSS Analytics調査によれば、遠隔医療ユーザーの大部分(30%)は、一人あるいは二人体制のケースでした。医師101人超が在籍する機関では、24%のみが遠隔医療を利用したと報告しました。頻繁に遠隔医療を使用する一人あるいは二人体制のケースは、精神科(21%)と小児科(20%)でみられました。「ハブ&スポーク」プラットホーム(単一施設間での視聴覚通信に依存する形態、例えば、ハブ病院と連携病院)は、外来患者に比べて入院患者でより多く使用されました(入院患者およそ60%、外来患者45%未満)。2019年、遠隔医療調査によれば、消費者の66%は遠隔保健サービスを使用したいと回答しましたが、医師とのビデオ診療を経験した人はわずか8%でした(Harris Poll, 2019)。

定義
バーチャルケアの利用増加にもかかわらず、言葉の定義を含め、遠隔医療を議論する際、多くの疑問、整合性のなさがいまだに浮上してきます。遠隔医療(telemedicine)はギリシャ語源の「tele」とラテン語源の「medicus」から来た言葉で、「遠隔から治療すること」を意味します。Health Resources & Services Administration(保健資源事業局:HRSA)は遠隔保健サービスを「電子情報と遠隔通信技術を使って、長距離臨床ヘルスケア、患者・専門家の健康関連教育、公衆衛生、衛生行政を支援し促進すること」と定義しています(HRSA, 2017, para. 3)。CMSは、HRSAの定義を採用し、遠隔保健サービスと遠隔医療という言葉を同義として使用しています。しかしながら、2017 HIMSS Analytics Digital Health Pulse調査結果を発表するにあたり、民間の調査機関であるKPMGは差別化を提案しました。すなわち、「遠隔保健サービス(telehealth)」は、在宅の臨床医と患者を直接あるいはモバイルツールを介して結ぶのに対して、「遠隔医療(telemedicine)」は、プライマリケア医あるいは救命救急医と医療専門家を技術により結ぶものです(KPMG, 2017)。

双方向ビデオもスマートフォンも、技術的な困難はありませんが、遠隔医療がモバイルツールを介した在宅診療以上のものであるという差別化は、このようなサービスを支援する環境をデザインする場合において重要です。風邪をひいて近所のプライマリケア医にFaceTimeで連絡することと、医療サービスが不十分な地域に住む患者に対して、あるいは不要な患者移送を避けるのが賢明な場合に、別の場所にいる専門家の患者ケアにつなげることは、根本的に異なります。FGI(Family Guidelines Institute, 2018, p. xxxix)は、ガイドラインが意図する遠隔医療という用語の定義を確立しています。すなわち、「患者と医療機関との間に距離がある場合に、ヘルスケアの提供およびサポートを目的として電子情報と通信技術を使用すること」としています。この定義に付け加えられた以下の注釈はさらに、この定義を詳述するものです(Facility Guidelines Institute, 2018, p. xxxix)。

遠隔医療の臨床利用には、診断、治療、法医学のモダリティが含まれます。一般的に、入院前評価と退院後フォローアップケア、予約および緊急の外来診療、投薬管理、心理療法、診察が含まれます。患者と医療機関間の診察、医用画像、遠隔モニタリング、教育はすべて、遠隔医療により提供できるサービスです。ビデオ会議システム、インターネットのウェブサイト、デジタルフォン、安全なeメールを含む各種技術を使用して遠隔医療サービスを提供できます。遠隔医療では電子ツールを使って、医療機関同士、あるいは医療機関と患者間で健康情報、サービス、教育についてやり取りすることが可能です。

遠隔医療空間におけるサービス

本まとめでは、遠隔医療(すなわちプライマリケア医あるいは救命救急医と医療専門家を結ぶこと)は、より広範な遠隔保健サービス(すなわち在宅の臨床医と患者を結ぶこと)とは異なります。

提供されるそれぞれのサービスには、臨床機能を支援するための照明や空間について具体的な必要条件があります。したがって、機能的なデザインにするには、遠隔医療空間でどのようなサービスが提供されるか知ることが重要になります。

本まとめでは、遠隔医療は、その他の患者本位のアプリケーションを使った広範なデジタル保健サービス(入院患者、外来患者のケアに等しく利用)、e-ビジットコンシェルジュサービス(入院患者ケアにより広く利用)、患者の遠隔モニタリング(外来患者ケアでの使用がやや多い)、消費者用の既製デバイス・ウェアラブルデバイス(入院患者、外来患者ケアにほぼ等しく利用)とは異なります。このような保健サービスの場合、技術はたいてい、固定施設(連携病院など)でなく、患者(ラップトップコンピュータなど)に直接接続されます。

遠隔医療サービスは、患者や家族(患者が子供、高齢者の場合など)との一対一のインタラクション、診察が可能であり、検査は、患者宅の遠隔医療プレゼンターにより支援されます。専門的サービス(皮膚科、整形外科など)が提供でき、それぞれのサービスについて、臨床機能を支援するための照明や空間についての具体的な必要条件があります。したがって、機能的なデザインにするには、遠隔医療空間でどのようなサービスが提供されるか知ることが重要になります。

当レポートは、2部作です。2部はこちら。

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