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モノ2020.12.18

ヘルスケア現場のガイドライン 遠隔医療デザインのまとめバーチャルケア(2)

遠隔医療空間をデザインするためのガイドライン
American Telemedicine Association米国遠隔医療協会:ATA)のHuman Factors Special Interest Group(人的要因特別利益団体:SIG)によれば、テレプレゼンス(telepresence)は、対面の臨床的意味合いとは別物であり、患者とサービス提供者の行動をはじめ、既存環境の環境品質、すなわち照明、音響と騒音、部屋の見た目、つまりほぼすべてを含みます(Krupinski & Leistner, 2017)。デザインが不十分だとやり取りの妨げにもなります。ある調査によれば、サービス提供者がコンピュータモニタを追うばかりの場合は目を合わせないので、患者は話を聞いてもらえていない、注意を払ってもらえていないと感じます(Gordon et al., 2020)。 既存環境に対する遠隔医療の必要条件は最初、2018年ガイドラインの中で、病院および外来患者施設両方に共通する要素の一つとして紹介されました。必要条件は、遠隔医療空間サイズ、プライバシー、音響設備、照明、内部空間表面、サイトID、設備の保管についてのものでした。患者数が少なければ専用の遠隔医療室を設けることは現実的ではない一方で、FGIガイドラインでは、空間は、医師オフィス、検査室、会議室などその他の目的にも使えるとしています(Facility Guidelines Institute, 2018)。

遠隔医療を始めようとする人向けのガイダンスは、これまで償還の規制要件や、設備の技術的仕様が中心でした。主なプログラムの目的は、アクセスのしやすさ、満足度、利便性などの患者本位のアウトカム、限られた数の医師の活用と効率改善、低コストでの治療提供、再入院の減少でした(REACHhealth, 2017)。しかしながら、遠隔医療は既存の環境で行われ、遠隔医療空間のデザインには、技術の選択や規制コンプライアンスの理解以上のものが必要です。デザインは、提供する診断や治療に必要な空間、音響設備、照明、凝視角、内部空間表面、サイトID、設備使用(保管場所、適切な換気など)をサポートするための必要条件事項に対応すべきです。

遠隔医療室は、患者および患者プレゼンター(該当する場合)がサービスの提供を受けるために問題なく動ける程度に広いことが望ましい

先に述べたように、遠隔医療空間のFGI必要条件は、患者の身体検査を必要としないバーチャル来院や、医師あるいは患者の自宅からの診療を意図するものではないことに留意することが重要です。とはいえ、2020年在宅勤務となったロックダウン時に、画面上で「どうすれば良く見えるか」を訴求した広告が登場したおかげで、在宅で使える多くの戦略(ぎらつき、直接光、間接光の管理など)があります。

空間的必要条件
遠隔医療のための空間は、患者、家族、プレゼンター、必要な家具(患者、家族のための椅子、検査台、カルテ台など)、設備を収容するものです。FGIガイドラインによれば、遠隔医療が患者検査に使用される場合、空間は、検査台がカメラ視野に入るように置ける広さでなければならず、固定あるいは可動の遠隔医療設備、周辺機器、現場ケア提供者あるいは患者プレゼンター、実際に検査する場合は手洗い場、文書作成場所を用意します(Facility Guidelines Institute, 2018)。
遠隔医療空間の大きさについて追加留意事項としてFGIガイドラインに含まれる項目は、各種レビュー文献のガイダンスに基づく推奨事項です。その一つは、カメラとマイクを患者近くに置く点です。遠隔医療周辺機器を使用、操作するプレゼンターが、患者と、離れた場所にいる医師へ送る画像を映すモニタの両方を見ることができるように、カメラと検査台を配置します(CTEConline, 2011)。マイクは、ビデオ会議で発言する人の正面かその近く、理想的にはハウリングを防止するため遠隔医療ワークステーションから少なくとも4フィート離して設置します(PHSA, 2013)。全方向マイクは天井から吊り下げることができます(Krupinski et al., 2007)。
遠隔医療室は、患者および患者プレゼンター(該当する場合)がサービスの提供を受けるために問題なく動ける程度の広さとします(CTEConline, 2011)。例えば、歩行評価を含むリウマチ検査の場合、遠隔医療空間は、行動がカメラで撮影できる広さである必要があります(略)。

以下の場所付近に遠隔医療室を設置しないこと
1)オープンオフィスエリア、2)人通りの多い廊下、3)階段吹き抜け、4)駐車場、5)待合室・待合スペース、6)空調システム、7)トイレ

プライバシー
遠隔医療空間は、部屋の臨床機能に基づき、音声と視覚のプライバシーを保護するデザインとします(Belz et al., 2009; Krupinski, 2014)。プライバシー保護については、遠隔医療空間の外側から見えないようにモニタ、スクリーン、その他の画像・データプロジェクションを配置できなければなりません。ドアは、気が散る要素であり、プライバシーにも関わるので、メインカメラに映らないようにし、誰かが「入ってくる」かもしれないと思わせないようにします(Major, 2005; PHSA, 2013)。また、患者が家族に健康状態を明かしていないのに話が漏れてしまう、あるいは背後にいる家族のせいで気が散る場合などは特に、別室を用意することが望ましいです(Almathami et al., 2020)。

音響設備
遠隔医療室は、音声が明瞭に聞こえ通信に支障の出ない音響環境でなければなりません(Facility Guidelines Institute, 2018)。一般的に、内部空間表面が硬いと反響し音響品質は低下するので、音響天井タイル、カーペットなどの吸音素材の使用を検討します(CTEConline, 2011; Krupinski et al., 2007; Major, 2005)。遠隔医療室の背景ノイズレベルは、その空間で実施される臨床機能に適したものでなければなりません。部屋は、マイクが拾ってしまう背景ノイズがなるべく少ない静かな場所とします(CTEConline, 2011)。例えば、オープンオフィスエリア、人通りの多い廊下、階段吹き抜け、駐車場、待合室・待合スペース、空調システム、トイレ近くの場所は不適切です。

加えて、遠隔医療室は、臨床機能に適した遮音レベルのデザインにしなければなりません。最小音響透過率(STC)を達成するようデザインする際、壁面、床・天井構造、ドア、ガラス部分、これら要素の性能に影響を及ぼすおそれのある現場条件を含め、空間包囲面すべてを考慮することを推奨します。明瞭な音声、遮音、背景ノイズについての具体的な必要条件はガイドラインに概説します。

照明
ATAによれば、照明は遠隔医療の場面では軽視されています(Krupinski & Leistner, 2017)。見た目を良くする「照明キット」の推奨を含め、在宅勤務時ビデオ会議における照明の重要さが最近注目されていることを考えれば(Aten, 2020; Graham, 2020)、人々の意識は改善されているかもしれません。しかしながら、照明は「見た目」以上のものであり、照明が適切であれば、照度が均一になり、自然な演色を確保します。照明は、臨床的にも社会的にも遠隔医療成功に貢献し、遠隔治療に対する満足度にもつながるものであり、これには周囲光と補助光(通常は天井照明、壁面照明)両方、それから参加者の顔が暗くならないようにするためのポイント照明(テーブルランプ)を含みます。(Krupinski & Leistner, 2017)。陰影(図2)は、肌の色、目の色、髪の色、顔の表情に影響します(Krupinski et al., 2007)。ハイエンドカメラにはオートゲインやホワイトバランスなどの補正機能があるかもしれませんが、ローエンドカメラは、画質調節や明るさの問題に対応するため照明の変更を必要とする限定的な機能しか搭載されていない場合があります。(CTEConline, 2011)。

図2 サービス提供者の顔の照明が均一でない例(Fred W. Baker III撮影のDoD(データ・オン・デマンド)画像

遠隔医療サービスのための空間はすべて、直接正面照明ができなければなりません(Major, 2005; Raymond et al., 2016)。直接、間接照明の両方を使用することにより、均一照明で正確に色が再現された画像を作ることができます(CTEConline, 2011)。光源が一つしかない場合、カメラになるべく近い場所に、カメラと同じ方向を向くよう配置するようにATAのQuick Guide to Telemedicine Lighting(遠隔医療照明クイックガイド)に説明されています(Krupinski & Leistner, 2017)。しかしながら、複数の光源(バックライトと補助光の両方)が推奨されており、ATAガイドは、天井照明と壁面照明の理想的なバランスは60:40としています。一方、California Telemedicine and eHealth Center(カリフォルニア遠隔医療・eヘルスセンター)(2011)は、頭上照明あるいは患者やサービス提供者の背後からの光源で顔が暗くならないように、患者に対して対角線方向の拡散光を推奨しています。
フルスペクトルの温白色光(3,200-4,000K)(Krupinski & Leistner, 2017; Major, 2005; PHSA, 2013)、最低照度レベル150フートキャンドル(Belz et al., 2009; Krupinski, 2014)を提案します。カラー照明(すなわち電球ガラス)や技術に起因する色味(例えばスペクトラムの狭い青色LED光)は避けるべきですが、臨床目的によっては、色つきの室内照明が求められる場合もあります(Krupinski & Leistner, 2017)。自然光源、人工光源からのぎらつきを抑制するための手段も必要です。例えば、窓のある部屋では、シェードやブラインドを使って光やぎらつきを抑えることができます(CTEConline, 2011)。逆光に適切に対処できない場合、臨床医や患者は窓正面に座らないようにすることも必要かもしれません。

凝視角とカメラ距離
アイコンタクトは視覚的通信の重要な要素ですが、ウェブカメラを使用する場合、アイコンタクトの認識はカメラ位置に影響されます(Chen, 2002)。ビデオ会議(および遠隔医療)では、ウェブカメラは通常モニタあるいはラップトップスクリーンの上部に配置されます。図3に示すように、カメラへの視線と、ディスプレイ中心すなわち視覚対象への視線とが形成する角度が凝視角です(Grondin et al., 2019; Tam et al., 2007)。

図3 凝視角

研究の結果、認識という点から、ビデオ会議用ウェブカメラはスクリーンモニタの上に置くことが望ましく、そうすれば凝視角は5度未満になります(Chen, 2002)。これに加えて、わずかな変化でも私たちの認識を変えることが研究からわかっています。例えば、Tamら(2007)が凝視角の差を研究したとき、凝視角が小さい(7度以下)の場合、受け手がより「うれしい」「温かみを感じる」「話しやすい」「信頼できる」「良い関係を持つ」「関与する」ことができ、会議参加者の発言したい内容に、より興味を持つという認識結果でした。凝視角が大きいと(15度)認識は否定的になり、受け手は「打ち解けない」「内気」「遠慮がち」「悲しげ」「落ち込んでいる」「上の空」「喪失状態」「何か隠している」「協力的でない」という認識結果になり、会議参加者を見ているようで、実は気が散っていて会話に集中していない/参加していない、注意散漫であるというものでした。最近の研究に、グースネックウェブカメラマウントを使用してモニタスクリーン上方のウェブカメラを下げ、椅子の高さをわずかに上げて使用した研究がありました(Grondin et al., 2020)。Grondinら(2020)は、こうすることにより凝視角を2.5度まで下げることができ、従来の位置にウェブカメラを設置した場合に目線が「下を向く」状態を緩和することができることを発見しました。
大型の独立したモニタを使用する場合は、距離が長くなるかもしれません。例えば、42インチモニタの場合は4フィート11インチ、65インチモニタの場合は8フィート2インチです(Ben-Arieh et al., 2016)。冒頭は「パスポート」写真(頭部と肩が映る)風の画角をお勧めしますが、その後、体や非言語的な「しぐさ」よく見えるように、カメラを調節(ズームイン、ズームアウト)してもよいでしょう(Ben-Arieh et al., 2016; Grondin et al., 2019; Nguyen & Canny, 2009)。

壁から壁までの距離により、患者とカメラとの距離が決まります。この距離は、サービス内容により様々ですが、サービス内容は望ましい「フレーミング」(頭部あるいは体がどの程度映るか)に左右されます。患者とそれ以外の人がすべて映る、上半身が映り非言語的しぐさが見える、顔だけ映る、などです(Raymond et al., 2016)。皮膚科など専門医によっては、細部をクローズアップして大きく映す必要がある場合があります(ATA Teledermatology Guidelines Work Group & ATA Practice Guidelines Committee, 2016)。部屋が小さいとカメラが患者に近づきすぎ、臨床医の視野は制限されます(CTEConline, 2011)。

遠隔心理療法(Grondin et al., 2020)、知覚された共感(perceived empathy)(Nguyen & Canny, 2009)では、患者にとってもセラピストにとっても、望ましい「心理学的」距離を提供する上で、視野のフレーミングが重要であることがわかっています。視野の距離および範囲はその他の認識にも影響する場合があります。例えば、テレメンタルヘルスなどのサービスにおいて、机の映像は広く受け入れられていません。一部の専門家は、机の映像は「バッファーゾーン」になると言い、別の専門家は障害物として認識されると言います(Raymond et al., 2016)。

図4 施設IDは壁面・背景面、あるいは画像に埋め込み

サイトID
遠隔医療プラットホームに埋め込まれる場合を除き、施設IDは遠隔医療サイトで提供され、施設IDは送信画像中に表示されるようにします(図5)。この表示は時に償還にも必要ですが、遠隔医療サービスが複数位置間で提供されるとき、話をしている相手がどこから話しているのか、医師や患者がわかるようになります(Major, 2005; PHSA, 2013)。

設備関連の課題
携帯用設備や周辺機器(例えば、デジタルカメラ・作業照明・心電図モニタ)が使用される遠隔医療空間には、安全な保管場所が必要です(Krupinski et al., 2007; PHSA, 2013)。遠隔医療サービスに使用される設備の追加的ガイダンスには、電子設備から発生する熱に応じて温度調節装置を用意することも含まれます(Charness et al., 2011; CTEConline, 2011)。体調が優れない患者の快適性という点でも、これは検討すべき事項です。使用する設備の複雑性に応じて、複数口電源タップ(例えば、電話・データ・電源)が必要です(CTEConline, 2011)。どの設備からも近い場所に必要なタップを用意することにより、床面のコード、ケーブルの危険リスクを減少することができます(Charness et al., 2011)。最後に、掃除が容易で感染防止策を取ることのできる遠隔医療設備を選択・設置してください(Krupinski et al., 2007)。

結論
「遠隔保健サービスが相手にするのは、技術ではなく人です」(Martínez-Alcalá et al., 2013)。遠隔医療と遠隔保健サービスはこの数年間、特にこの数ヵ月で急速に進化し、このヘルスケアの形態は今や、ビジネスの「新しい」方法として、かつてないほど受け入れられようとしています。技術が進み、組織がプラットホームやサービスオプションに馴染むにつれ、このような実務を支援するため、既存環境の最小限基準を改善する必要性は出てくるかもしれません。
FGIガイドライン内容は冗長になるのを避け最小限基準だけとし、広範な推奨事項は付録としました。これにより柔軟性が生まれ、組織は提供するサービスに基づき自身の必要レベルに合わせることができます。業界が発展し、より多くのエビデンスが使用可能になるにつれて、いくつかのデザイン必要条件は実施ガイドラインとともに進化するかもしれません。しかしながら、電子設備を介する遠隔コミュニケーションが、特にパンデミックの状況下では、対面ケアを補完する必要要素である一方、遠隔医療空間のデザインは、高齢患者、電子通信に不慣れな人、視覚・聴覚・認知障害のある人を含め、あらゆる参加者にとって自然なコミュニケーションを促進するものであるべきです。遠隔医療コミュニケーションのための空間設計は常に、対面で行う場合に期待されるのと同じく、安全で、プライバシーに配慮し、質の高いケアや患者経験(patient experience)を維持することを目指すべきです。


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