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モノ2021.01.22

EBD エビデンスベースド・デザイン病棟デザイン改修におけるEBDとリーンフィロソフィ―(利用者を中心に据えて設計の無駄を省く考え方)の活用

探究シリーズ
どのようにエビデンス・ベースド・デザインとリーン・フィロソフィ(lean philosophy)は協同しUWヘルスのフレキシブルなプロトタイプ病棟を作り上げたか
プロセス・ドリブン・デザインのプロジェクトまとめ:ウィスコンシン州マディソンUWヘルスにおけるリーン・フィロソフィ


このレポートから学べる事
・UWヘルスの病棟リデザインはどのように将来のリデザインプロジェクトのプロトタイプになりうるのか
・新しい病棟が様々なスタッフおよび患者ニーズに応えるためにフレキシブルでなければならないのはなぜか
・どのように学際的チームは広範な観察研究所見と既存文献を使用して全体的デザインプロセスを特徴付けたか

本プロジェクトまとめはAffiliate+ Programの特典として作成。
The Center for Health Design(ヘルスデザインセンター)


ゴール
UWヘルスは、協同作業をサポートし、ベッドサイドでの患者ケアに費やす時間を増やしながらも、労力と時間を浪費するイベントを削減するような理想のプロトタイプ病棟を創造したいと考えました。

難題
プロジェクト当初、デザインチームは、どの病棟が新しいデザインに変わるか知りませんでした。つまり、様々な場面やニーズに対応できる適応能力の高いデザインを創造しなければなりませんでした。

学際的チームはエビデンス・ベースド・デザイン(EBD)とリーン・フィロソフィに基づきUWヘルスのフレキシブルなプロトタイプ病棟を創造

ウィスコンシン州マディソンUWヘルス

目的
ウィスコンシン州マディソンのUWヘルスは、ウィスコンシン大学マディソン校内にあり、大学メディカルセンターを含む統合型ヘルスシステムです。最近、同ヘルスシステムの入院患者用の古い専門領域病棟の一つを改修するにあたり使用する新しいデザインプロトタイプを創造するため、HGA, Inc.と契約を結びました。同ヘルスシステムはインフラ最新化計画を他にも推進していて、異なるニーズを持つその他様々な病棟にも使えるフレキシブルなデザインである必要がありました。

新しいデザインの最終目標は、ベッドサイドの患者ケアをサポートし、患者およびスタッフの不要な移動を削減することであり、更には、患者アウトカムやスタッフ満足度を改善することでした。プロジェクトでは同時に、病棟および病棟以外のエリアで、スタッフ、患者、家族間の学際的協同をどのようにサポートするかも模索しました。

「取り組みを正しい方向へ導くため、私たちは、まず理想的な現状・未来像を調べることから始めました。また、ヘルスシステム内の他の病棟を見て、何が機能しているのか理解し、調節可能な様々な不確定要素を確認しました」とHGA, Inc.のワークプロセススペシャリストであり、EDAC、CLSSGB資格を持つKiki Werkheiser氏は言います。

氏によれば、UWヘルス・プロジェクトの強みは、医療およびサポートスタッフ、UWヘルスの患者・家族諮問委員会を含む大きな学際的チームがまとまり、デザインプロセスを正しい方向に導いたことでした。

プロジェクトはまた、新病棟のための最も効率の良いプランを創造するため、リーン・フィロソフィとEBDの二つを拠りどころとしました。「リーン(無駄のないこと)は、EBD同様、私たちの文化の重要部分です。私たちの最終目標は、常にこの二つの方法論を融合し、可能な最善のアウトカムを達成することです」とHGA, Inc.のリサーチスペシャリストでありEDAC資格を持つKara Freihoefer博士は話します。

「業界では、エビデンスに基づき決定を行う組織が増え始めていて、私はその変化を目の当たりにしています。とても勇気付けられます。ミクロレベルで始まったことがマクロレベルへ広がっています。EBDと共に私たちが進んでゆく未来を見ることができます。」

Freihoefer博士によれば、UWヘルスは大学施設なので、最新のエビデンスや戦略を使用して決定を検証し、正しい方向へ導くことについては、スタッフの準備はすでにできていました。さらに、観察時に収集されたエビデンス、患者・家族のアンケート調査、他の病棟から得た教訓、分野の既存文献などは、ニーズを評価し、デザインプロセスを特徴付けるためのクリティカル・トゥ・クオリティ(品質に重大な影響を与える要因)(CTQ)基準を確立するのに役立ちました。

二種類のCTQ基準が開発されました。一つは病室用、もう一つは病棟用です。この二つの基準は、看護を分散化して患者サイドのカルテ作成やカルテ内容の視覚化を促進すること、ノイズを削減して癒し環境を強化すること、患者・家族の満足度、プライバシーを改善することを含みました。

「私たちは、意思決定の全プロセスを通してこのCTQ基準を使用しました。プロトタイプや実物大模型を使用して各種演習を実施し、そのすべてについて、必ずCTQ基準に照らし、私たちのモデルが当初立てた最終目標に沿っているか確認しました」とWerkheiser氏。

難題
デザインチームが直面した一番の難題は、新しい空間に最終的に入る具体的な専門領域を知らずに、プレデザインを開始したことでした。「理想のプロトタイプを開発することが全体目標でしたが、同時に、最終的にリデザイン対象となる具体的な専門領域のニーズにも合致しなければなりませんでした」とFreihoefer博士は言います。

この難問に対処するため、デザイナーは、新しい空間に移動する確率が最も高いと思われた病棟で観察研究を実施しました(勘は結果的に当たりました)。また色々なUWヘルス施設のその他のモデル病棟を観察し、異なるデザイン特長がどのように機能しているのか確認しました。結局、合計4病棟でシャドウイング(行動動線捕捉)データを収集、これを比較し、カルテ取り扱いエリア、設備、物品保管場所の位置によってどのようにワークフローが変化するか把握しました。

「4病棟について、HCAHPSスコアも回収し、患者満足度の差異も調べました。私たちの取り組みを正しい方向へ導くために参照したその他の測定値には、転倒率、転倒に起因する傷害件数、褥瘡などがありました」とFreihoefer博士は言います。


主な発見

1)リーン・フィロソフィとエビデンス・ベースド・デザインの組み合わせにより、医療スタッフ、運営スタッフ、患者と家族を含め、学際的チームの異なるメンバーを一つにまとめる枠組みができた
2)デザイナーは、発表されている研究や自身の観察研究の両方のエビデンスに基づき、新しいデザインを正しい方向へ導く最善の方法を見つけた

3)計画プロセスを通して意思決定を特徴付けた主要CTQ基準の定義付けにエビデンスが用いられた
4)スタッフ、家族は各種演習でデザイン用の実物大模型をテストし、現実世界でどのように機能するか確認した


「私たちは普遍的ニーズを理解しなければならず、最終結果を具体的な専門分野に合わせながらも、フレキシブルなデザイン性を失うほどまでに一つの専門領域のニーズに過度に対応することがないようにしなければなりませんでした」と付け加えました。

結果
EBDの8ステップがデザインプロセスを通して重要な役割を果たしました。「私たち独自のエビデンスであれ文献からのものであれ、エビデンスを提示するたびに、学際的チームは情報を吸収し、そこから得た洞察に基づき正しい意思決定に至りました」とFreihoefer博士は言います。

例えば、チームは、このアプローチを取り入れた別の病棟を見ることにより、分散型モデルの賛成意見と反対意見とを探りました。異なるワークフロー/スパゲッティチャートを試し、モデルがどのように機能するか調べました。過去の研究も調べました。そこからわかったのは、分散型モデルが必ずしもスタッフ間の対面時間を減少させる(共通関心事)わけではないということでした。

また、左右逆の病室配置と画一的な同一病室配置の違いも調べました。手がかりを得るため、同じように文献を調べた結果、効率性では両者に差異は認められませんでした。それどころか、文献によれば、スタッフが仕事に就く前に、作業ゾーンと患者についていつも同じ視点を持たせることの方がより重要だとわかりました(Stichler & McCullough, 2012; Pati, Carson, Harvey & Evans, 2010)。

「私たちはスタッフと共に歩き、スタッフの仕事の様子を観察し、患者・家族諮問委員会にアンケート調査を送付しました。すべてのスタッフから多くの意見感想を回収し、『悩みの種』がわかりました。バリューストリームマッピングなどのツールも使用し、患者の行動や思考をチェックし、改善対象となるエリアを確認しました」とFreihoefer博士。

「このように色々な洞察すべてを確認した後、私たちはそのうちのいくつかについて、実際の演習でテストしました。極端な設定で異なるフロア平面図をテストしました。例えば、安全性という観点では、可能な限り絶対安全なフロア平面図を作成しました。極端なまでに限界を押し広げ、物事をテストし、物事がどのように働くか話し合ってもらいました」とFreihoefer博士は続けます。「家族、患者、スタッフの意見感想を集めていました。異なる視点のすべてがみごとに融合されたわけです。」

「私たちは異なるグループに属する多くの利害関係者を抱えていて、その人たちはデザインプロセスにとって重要でした。そして、明確に定義された情報をEBDとリーン・フィロソフィと組み合わせることにより、実際に意思決定を手助けすることができました。」

結論
「1日目からの私たちの関わり方は重要であり、それはプロセス全体を通して変わりませんでした。」とWerkheiser氏は続けます。「私たちは異なるグループに属する多くの利害関係者を抱えていて、その人たちはデザインプロセスに深く関与していました。そして、明確に定義された情報をEBDやリーン・フィロソフィと組み合わせることにより、実際に意思決定を手助けすることができました。」

利害関係者の関与

目標へ向かって、様々な演習を実施しました。「実物大模型を使ったり、フロア平面図をテストしたりしました。これらは、懸案事項だった不確定要素のテストに役立ちました。建築プロセスへ人々が関与することにより、素晴らしいアプローチになりました。」

リーン・フィロソフィとEBDが建築プロセスに貢献できた事柄として、(別の病棟要素の非効率な設置、余計な移動時間が必要となるような物資など)無駄の確認・排除が進んだことや、ワークフローを戦略的に変更することにより対処できる安全に係る患者不安を確認したことなどがありました。

病棟は最近オープンしたばかりで、結果を評価する施設利用者満足度調査はまだ実施されていません。ただ、デザイナーは近い将来、8つのEBDステップを使って、どれだけ病棟が機能しているのか評価し、改善機会を明らかにする計画です。「UWヘルスはこの病棟から学びを得て、将来のリノベーションに役立てたいと考えています。」

Werkheiser氏もFreihoefer博士も、仕事の範囲、多数の異なるグループが係る関与レベルという点、UWヘルスがユニークなプロジェクトであるという点で意見は一致しています。

「プロセス改善と研究のためにこのレベルで係るということは、クライアント、私たちが相手にするヘルスシステム、そのヘルスシステムを構成している人々にまで係るということです」とWerkheiser氏は言います。「私たちのクライアントは、このような事項を尊重し、信用し、希望するのです。私たちにこのような人々との仕事を要求し、私たちをパートナーとし、プロセスを成功させようとする点で、私たちのクライアントは他とは明らかに異なるのです。」

さらに、リーン・フィロソフィとEBDが、デザインプロセスの問題解決を助けることになりました。「情報のすべてを精査するのに時間と労力をかけ、デザインを描き始めプロセスを開始する前から何が起こるか考えることをリスクと思われるかもしれません。でも、最終的な投資対効果を見たとき、はじめに時間、コスト、労力をかけたことが正しかったと思えるのではないでしょうか」とはFreihoefer博士の言葉です。

「学術界のパートナーは特に私たちのプロセスを受容する能力は高いように思いますが、一方で、業界では、エビデンスに基づき決定を行う組織が増え始めていて、私はその変化を目の当たりにしています」と付け加えます。「とても勇気付けられます。ミクロレベルで始まったことがマクロレベルへ広がっています。EBDと共に私たちが進んでゆく未来を見ることができます。」


Center for Health Designは本プロジェクト要約の情報は正確と考えますが、情報について事実確認しておらず、またいかなる所見もテストしていません。したがって、内容について、明示・暗示を含め、何ら責任を負うものではありません。

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