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コト2021.02.26

キーポイントサマリー手術室レイアウトが看護師と手術に与える影響について −行動マッピング研究−

目的

本研究は、どのように手術室のレイアウトおよび隣接性が外回り看護師の移動パターンとワークフローに影響するか、またどの程度サージカル・フロー・ディスラプション(手術時ワークフローの中断の原因となるイベント、以降SFD)に影響するか調査することを目的とします。

外周り看護師の作業パターンとフロー・ディスラプションに与える手術室レイアウトの影響:行動マッピング研究
Bayramzadeh, S., Joseph, A., San, D., Khoshkenar, A., Taaffe, K., Jafarifiroozabadi, R., Nevens, D.M., 2018 / Health Environments Research & Design Journal, Volume II (3) , Issue N/A, Pages 124-138

キーコンセプト/コンテキスト

建築レイアウト、スペースプランニング、隣接性がユニットレベルのワークフローパターンに及ぼす影響に焦点を当てた研究はありますが、個別処置室あるいは手術室のミクロレベルの研究はほとんどありません。手術室のレイアウトや医療機器の配置によっては、無駄で不要な移動が生じ、安全性や効率の妨げとなったりすることがあり、SFDにつながります。

麻酔中に防御反射が落ちる患者を守る立場にある外回り看護師(CN : Circulation Nurse、以降 CN)は、手術時、患者の安全と効率的環境を確保する上で重大な役割を果たします。CNはチームの中で最も移動の多いメンバーであり、手術全過程を通して、活動やリスクやイベントを観察、モニタ、管理、記録します。CN専用ワークゾーンはCNにとって活動拠点ですが、手術室でのほとんどの活動は複数ゾーンをまたぐ移動を伴います。

手法

サンプルは、最小390平方フィート(119 ㎡)から463平方フィート(141 ㎡)、最大690平方フィート(210 ㎡)まで大小様々、レイアウトの異なる手術室3ヵ所での手術25件です。小児12症例、成人13症例の手術を37時間にわたり観察しました。

手術室は機能ゾーンに分割され、最初にAhmedら(2016)の研究に基づき8つのカテゴリーに分類されました。これらカテゴリーを集約すると、一次機能が発生する5つの領域、すなわち、CN専用ワークゾーン、麻酔科医師専用ゾーン、手術台を含む滅菌ゾーン、医療材料や医療機器など供給物の置かれたゾーン、ゾーンとゾーンの間の「移行(動線)」のゾーンです。この領域をさらに細分化すると合計20のゾーンカテゴリーに分かれます。3ヵ所の手術室それぞれのゾーンの隣接性を示すためにバブルチャートを作成しました。

CNの活動は、頭文字をとってPEMSIと表記されるカテゴリー、すなわち、患者(patient)関連、医療機器(equipment)関連、医療材料・供給(material/supply)関連、情報(information)関連に区分されました。SFDは、Palmerらによる既存の分類に基づき6タイプにカテゴリー分類されましたが、本研究では、物理的環境に関する2カテゴリー、すなわち全体レイアウトと環境面の脅威に焦点を当てました。

行動マッピングテクニックを使用し、手術全過程のCNの移動パターンを観察、コード化しました。各手術室でMedia Recorderのカメラ4台を使用し、手術を邪魔することなく観察しました。カメラ4台のビデオ同時観察はObserver XTソフトウェアにより可能になりました。観察者は大学院生と研究助手11人で、臨床訓練を受けた研究チームメンバーが監督しました。

CNの移動パターンは手術全過程で観察され、観察者によりコード化されました。観察者は、CNの活動タイプ、活動持続時間、移動したゾーン数、CNが経験したSFDを観察しました。コーディング分類は、文献レビュー、既存コーディングプロトコルと既存コーディング分類に基づきました。研究チームは初期フレームワークを12の対人観察を通して証明し、さらに、2つの追加パイロット研究によりコーディングプロセスの精度を上げました。この反復により検者間信頼性は80%を超えました。

ゾーン間活動の観察とコーディング結果は、1)各手術について、手術室入室から処置終了時の退室までのCNの動線を示すスパゲッティチャート、2)具体的なPEMSI活動の時間と回数、3)ゾーン間の移動回数、4)環境および脅威関連のSFDの回数と場所について記録されました。

結果

手術25件全体で2,200のSFDが認められました。そのうち、584件、すなわち26%が環境的脅威や手術室のレイアウトに関するものであり、環境的脅威が152件、レイアウトに関するものが432件でした。SFDの58.3%が移行ゾーンで発生し、28%が手術台ゾーンで発生しました。本研究は小さなサンプルサイズ(25件)と限定的ですが、フローチャートからは、CNの作業と移動パターンは手術のタイプが異なっても同様であることがわかります。

複数機能ゾーン間の移動は、時間にして31%が医療材料関連、31%が情報関連、20%が医療機器関連、8%が患者関連でした。 

CN専用ワークゾーンはCNが最も頻繁に立ち寄るゾーンであり、その他の頻繁立ち寄りゾーン、特に移行ゾーン、医療機器および医療材料サポートゾーンをCN専用ワークゾーンに直接隣接させることにメリットがあり、これらのゾーンで最も多く発生しているSFD(58%)を抑制できる可能性があります。

次にSFD発生率が高いのは、CN専用ワークゾーンと手術台の間でした。CNは、手術台のニーズに素早く反応できなければなりませんが、通過時、滅菌エリアの汚染を避けなければなりません。この2つのゾーンは間接的に隣接させることにメリットがあり、このゾーンのSFD発生率(28%)を減少させることができます。

限界

サンプルサイズが手術25件という便宜的サンプルに制限されたため、結果が示唆する内容を広く一般化するには注意が必要です。実施手術は一般成人と小児の症例で、手術全過程でCNのワークフローには大きな類似性がありましたが、これら類似性がその他様々な手術でも観察されうるか研究する必要はあります。

デザインの意味

手術室内のデザインは、1つのゴールをめざす大きなチームの安全性と効率性を確保するための主要テーマです。手術室内のCNの役割は患者の安全とチーム全体の効率的機能性をはかるために重大です。隣接性が適切でなければ、CNが移動しなければならないゾーンが増え、SFD数が増えます。本研究では、CNのワークフローパターンと手術室のレイアウトや医療機器配置との関係に注目しました。CN専用ワークゾーンとサポートゾーン、特に医療材料および医療機器サポートゾーンとは、直接隣接していることにメリットがあり、SFDを招くことなく必要な品目に簡単に手が届きます。CN専用ワークゾーンと手術台ゾーンは間接的に隣接していることにメリットがあり、手術台に素早く近づくことができる一方で、CNが滅菌エリアを汚染しないようその移動を調整する必要はなくなります。

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