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コト2021.10.14

キーポイントサマリーNacadia®セラピーガーデンの使用後の診断的評価 

目的:
本研究は、施設使用後の診断的評価(DPOE:Diagnostic Post-Occupancy Evaluation)によりナカディア・セラピーガーデンの成功と失敗を調査し、ガーデンとNBT(nature-based therapy)プログラムの活動が患者のヘルスアウトカムや幸福感に及ぼす影響を調べることを目的とします。

ナカディア・セラピーガーデンにおける施設使用後の診断的評価

Sidenius, U., Karlsson Nyed, P., Lygum V.. L., Stigsdotter, U. K., 2017 International Journal Of Environmental Research And Public Health, Volume 14, Issue 8, Pages 882

キーコンセプト/コンテキスト
ナカディア・セラピーガーデンは、コペンハーゲン大学が開発したランドスケープアーキテクチャーにおけるエビデンス・ベースド・ヘルスデザイン(EBHDL:Evidence-based Health Design in Landscape Architecture)モデルに基づき建設されました。このモデルでは、景観デザイナーの専門知識と経験、ユーザーのニーズ、リサーチ・エビデンスを使用し、同セラピーガーデンの目的を詳細に検討の上設計し、継続的に評価し、施設使用後の診断的評価(DPOE)を実施しました。本サマリーでは、ストレス性疾患の患者を対象とする自然を利用するセラピー(NBT)が20ヵ月間にわたり実施されたナカディア・セラピーガーデンのDPOEから得られた結果を紹介します。DPOEの結果から、参加者の全体的ヘルスアウトカムに有意な改善が見られたことがわかりました。

手法
2011年コペンハーゲンの北、ヘルスホルムの植物公園内に建設されたナカディア・セラピーガーデンは、ストレス性疾患がある人のために設計されました。10週間(2013年8月から2015年3月)のNBTプログラムは、同セラピーガーデンでの実施を目的として開発されました。DPOEが実施され、プログラムとセラピーガーデンの成功を評価しました。DPOEでは、インタビュー(建築家、スタッフ、患者)、景観分析、観察(患者の位置はiPadを使用して記録)、日誌(NBTプログラムの一環として患者がつけていた)の調査、セラピーガーデンの活動の分析、健康および幸福感に関するアウトカムの評価、行動マッピング(iPadと地図情報システムを使用)、参加者へのアンケート調査(プログラム開始および終了時)の実施管理(欧州QOLビジュアルアナログスケール(EQ-VAS))など複数の手法が使用されました。アンケート調査は統計学的に分析され、インタビューは、患者視点を探るため内容分析されました。

結果
セラピープログラムの鍵となる施設の物理的要素には、小屋、樹上木製デッキ、木製通路、エントランスゲート、つる棚、温室、オフィス棟が含まれます。セラピーガーデンの3分の2は樹々に覆われ、残りは草地です。泉、小川、池、島が浮かぶ湖があります。セラピーには、個別会話療法、ガーデンアクティビティ、気付きのエクササイズ、参加者自由時間、宿題(経験を日々の生活に活かすこと)が含まれました。プログラム・スタッフは認定心理学者2名、監督指導能力のある精神科医1名、プロの庭師1名でした。プログラム参加者42人(各4~7人を7つのグループに振り分け)は、年齢20~60歳で、ストレスあるいはストレス性症状のために3~24ヵ月間働くことができず、同症状の原因となる身体疾患の治療済みで、かつ、自殺願望や薬物乱用のない人でした。

調査の中心ポイント
セラピーガーデンの物理的環境を調査したところ、周縁部が高く、低い中心部へ向かって傾斜していました。中心には小川が流れ、自然のままに草が伸び、野生のような植生がみられました。

スタッフや参加者は、フェンス沿いに木や低木を植えたり、セラピーガーデン内が見えないように木材を積み上げて目隠しを作ったり、新しい通路を作ったり、草地の草を刈ったりして、ガーデンに手を加えていました。セラピーガーデン内には、参加者がグループで対話したりひとりの時間を過ごしたりするのに適したスペースが、草地、2本の低木の間、小川やミツバチの巣の傍らなどにありました。「明確に仕切られたスペース」(花壇や焚き火台など物理的境界により仕切られるスペース)や「スポット・スペース」(物理的境界のないスペース)です。

参加者はセラピーガーデンでの経験全般について、自分自身に向き合い問いかけるための安全、刺激、くつろぎ、落ち着き、自由を感じたと報告しました。セラピーガーデンは、グループアクティビティに参加するにしても、ひとりで過ごすにしても、適切な広さだという感想でした。自然の音、鳥のさえずり、川のせせらぎなどが印象深いようでした。「明確に仕切られたスペース」はナカディアでの前向きな経験そのものだと受け取られていました。このスペースでの一番の経験は、包み込まれている、守られているという感覚であると同時に、空間の広がりを感じるというものでした。「スポット・スペース」は、ひとりになって逃げ込むことのできる場所であり、そこでの一番の経験は、庭と空、平穏と静寂の中に包まれる小さな空間というものでした。

図3 主要構成要素の詳細を含むナカディア・セラピーガーデン平面図

1.小屋、2.コンポスト、3.高床デッキ、4.焚き火、5.エントランス、6.木製メイン通路、7.小川、8.池、9.多年草エリア、10.ミツバチ巣、11.草地、12.ウッドデッキ、13.ベンチ、14.野菜エリア、15.湖、(図中右上)砂利道、(図中下)温室、オフィス/更衣室
(出典:Sidenius, U., Karlsson Nyed, P., Lygum V.. L., Stigsdotter, U. K., 2017 International Journal Of Environmental Research And Public Health, Volume 14, Issue 8, Pages 882)

図4 環境条件(地形構成要素)

環境条件(地形構成要素):木製メイン通路、小川に点在する岩、刈り込みエリア、通路
(出典:Sidenius, U., Karlsson Nyed, P., Lygum V.. L., Stigsdotter, U. K., 2017 International Journal Of Environmental Research And Public Health, Volume 14, Issue 8, Pages 882)

プログラムでは、景観とその特長が広く活用されていました。焚き火台周囲のベンチ、草地を円形に刈り込んだ場所で気付きのアクティビティが実施されました。庭師が参加者を連れ出し各種園芸アクティビティを実施しました、個別の会話セラピーは「スポット・スペース」で腰を下ろして実施されました。自由時間のアクティビティは「明確に仕切られたスペース」と「スポット・スペース」の両方で実施されました(どちらを選択するかは、景色、匂い、水の音、楽しい記憶を呼び起こす要素など、より感覚的経験が望めることが決め手となりました)。

ナカディア・セラピーガーデンの活動は、アクティビティのタイプ、各参加者に提供する精神的身体的課題の範囲において、多岐にわたりました。これらの活動への参加は自由意志に基づくため、結果、患者にとって前向きな経験となりました。日誌の記述を見れば、様々なアクティビティに参加することで、患者は冷静になり、自身を振り返りマイナス思考を認識し、日々のタスクを達成する中で、代わりとなる、より積極的なアプローチを見つけることができるようになりました。

アンケート調査の結果はインタビューや日誌のデータと一致しました。インタビューや日誌の中で、参加者は、リラックスでき、冷静、穏やかでいることができ、怒りを感じることが少なくなり、元気になり、記憶力がよくなり、認知症状の問題が少なくなり、物事を受け入れることができるようになったと報告しました。EQ-VAS回答は対応のあるサンプルのt検定を使って分析し、全般的ヘルスアウトカムを評価しました。参加者は、10週間のセラピー期間で健康は有意に改善したと報告しました(p<0.001)。

成功と失敗
著者らがセラピーガーデンとそのプログラムについて成功と評価した点は、「明確に仕切られたスペース」の存在とこれらのスペースが安全で参加者を保護したこと、参加者が自身の能力を探り、課題に挑戦するのに心地よい環境だと感じたこと、参加者が互いに友好を深めたり、一方で他の参加者から離れてひとりで過ごすこともできたこと、一年を通して、体を使うアクティビティ、精神面を回復させるためのアクティビティ、具体的あるいはシンボル的アクティビティがあること、ヘルスアウトカムが改善することです。

プログラムの問題としては次の点が挙げられます。

  1. 露出。ナカディア・セラピーガーデンは植物公園内に位置するので、来園者にセラピーガーデンが見え、ほとんどの参加者はその点をマイナスと考えました。
  2. 公園メンテナンスの影響。伸びた草は「スポット・スペース」として参加者に好評でしたが、草刈り後、参加者は別のスポット・スペースを探さなければならなくなりました。
  3. 風で生じる音。金属製の銘板や焚き木台エリアの天幕が風に揺れる音が不評でした。
    冬季落葉時は適切に仕切られたスペースが少なくなったようでした。気象条件(雨、寒さ)は活動の障害になりました。

限界
著者らが確認した本調査の限界は次の通りです。a. 環境、NBTアクティビティ、あるいはその両方が参加者の幸福感に影響するか確認することは困難でした。さらに、今回検討していないその他の原因がヘルスアウトカムの改善に寄与した可能性もあります。b. 同じ環境、同じ活動でも、各参加者への影響は異なります。c. 参加者は(活動と)併せて宿題をこなさなければなりませんでした。セラピーガーデン外のどのような要因が参加者のヘルスアウトカムに寄与したかは不明です。

本調査のその他の限界は次の通りです。a. プログラム終了後参加者のメンタルヘルスの客観評価はありませんでした。b. 調査には、参加者が自身の疾患に対する治療薬を使用していたかの記述はありませんでした。

デザインの意味
著者らは、他のセラピーガーデン・プロジェクトの評価にDPCEを使用することを推奨しています。セラピーガーデンを設計する景観デザイナーなら次の事柄を考慮するかもしれません。a. 葉が茂る木や低木を周囲に配して参加者のプライバシーを維持すること、「スポット・スペース」としても使えるスペースを設計し、対話にもひとりの時間にも使えるようにすること。

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