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コト2021.11.19

キーポイントサマリー手術室内の快適性に関わる換気システム調査 

目的:
本研究は、手術室内のエネルギー消費量、空気清浄度、外科医視点の快適性全般について、3種類の手術室換気システム(LAF、TMA、TcAF)を調査します。

手術室における層流および乱流混合気流と温度制御換気の比較

M. Alsved, A. Civilis, P. Ekolind, A. Tammelin, A. Erichsen Andersson, J. Jakobsson, T. Svensson, M. Ramstorp, S. Sadrizadeh, P-A. Larsson, M. Bohgard, T. Šantl-Temkiv, J. Löndahl 2017. Journal of Hospital Infection. Volume 98, Issue 2, Pages 181-190

キーコンセプト/コンテキスト
手術室(OR)内における空気中の細菌濃度を低く維持することは、手術部位感染(SSI)の防止をするため広く受け入れられている解決法です。細菌の抗生物質に対する耐性化が進んでおり、研究者や設計者はORの換気システムを改善し、SSIを抑える努力をしています。SSIを抑えるためにOR内で通常使用される換気システムは、層流(LAF)/乱流混合気流(TMA)システムです。しかしながら、これに関する研究は充分でなく、個別のケースにどのシステムを使用するか判断するための情報が設計者にはありません。新しい換気システムである温度制御換気(TcAF)についてもさらなる分析が必要です。

手法
研究者は、2015年1月から2016年2月にかけて3ヵ所の単一急性期病院のORにおいて、エネルギー消費量、空気清浄度、スタッフ快適度を測定しました。本調査の対象となった3ヵ所のORは、LAF、TMA、あるいはTcAFの異なる換気システムを使用していましたが、その点以外の設計は、互いに似通っていました。同様の装備の外科医による同様の外科処置15種類について、各ORで観察し、合計45件の手術を調査しました。

図1 3つの換気システムの気流の原理を示す模式図。(a)乱流混合気流、(b)層流気流、(c)温度制御気流。
(出典:M. Alsved, A. Civilis, P. Ekolind, A. Tammelin, A. Erichsen Andersson, J. Jakobsson, T. Svensson, M. Ramstorp, S. Sadrizadeh, P-A. Larsson, M. Bohgard, T. Šantl-Temkiv, J. Löndahl 2017. Journal of Hospital Infection. Volume 98, Issue 2, Page 182)

結果
一般的に、人工関節などのデバイスの留置術、あるいは感染が起こりやすい手術の場合、SSIを最小限に抑えるには、空気中1立方メートル当たり10コロニー形成単位(cfu/m3)未満の細菌濃度が推奨されます。研究者が確認したところ、手術時間中、LAF、TcAFシステム共に、OR内の空気はこの推奨値を下回るレベルに維持されました。TMAシステムのcfu濃度は推奨値より高く、感染症のリスクがある手術では問題となることがわかりました。LAF、TcAFシステムはまた、清浄な直接気流を効率よく作ることができ、清浄な空気を供給しながらも、エネルギー消費量や患者の低体温リスクを抑えることができました。TcAFシステムはスタッフ環境の快適性の点で最高の評価を得ました。

図2 3つの換気システムの気流速度を示す数値流体力学的シミュレーション。スケールバーの色は気流の速さの違いをm/sで表しています。左列 の画像は手術台の長辺に沿った手術室の断面図、右列の画像は手術台の短辺に沿った手術室の断面図。(a,b) 乱れた混合気流。(c,d) 層流気 流。(e,f) 温度制御された空気の流れ。
(出典:M. Alsved, A. Civilis, P. Ekolind, A. Tammelin, A. Erichsen Andersson, J. Jakobsson, T. Svensson, M. Ramstorp, S. Sadrizadeh, P-A. Larsson, M. Bohgard, T. Šantl-Temkiv, J. Löndahl 2017. Journal of Hospital Infection. Volume 98, Issue 2, Page 183)

限界
著者らは、LAF/TMAシステムの設計は多岐に渡っており、本研究ではそのうちごく一部のみを対象とした点に言及しています。また、調査対象となった3ヵ所が同様のORであり、外科処置あるいはスタッフのルーチン/リソースにバリエーションがない点も限界と考えられます。手術後のSSI発症に関するフォローアップも実施されませんでした。cfuは空気中微生物量の標準的測定単位ですが、今のところ限界があります。本調査では、他の細菌コロニーは考慮されなかったと思われます。

デザインの意味
本調査は、エネルギー消費量と空気中生菌浮遊量が少なかったことから、層状換気システムや温度制御換気システムの使用を支持するエビデンスを提供するものです。温度制御換気システムは、本調査が対象とした最新のデザインであり、外科医の労働環境の快適性の点でも最高評価を得ています。設計者は、OR自体の設計のみならず、スタッフのルーチン/リソースを注意深く検討したうえで、理想的な換気システムを決定すべきです。

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