CLOSE

CHD JOURNAL

HOME > CHD JOURNAL > カイザーパーマネンテ(3)
モノ2022.03.18

ヘルスケア・アクセス/アウトカム改善のためのデザインソリューションカイザーパーマネンテ(3)

電子カルテの使用

施設デザインに必ずしも直接関係しませんが、電子カルテの使用は公衆衛生を評価、モニタするKPの能力の重要な項目です。KPは10年以上前に電子カルテを使用し始め、HealthConnectプラットフォームにより、スタッフ/メンバーは電子カルテに簡単にアクセスすることができます。フルシステムインテグレーションでは、ウェブアクセスやセルフサービス型ブース登録が可能です。データは多重レベルで集積、分析され、電子カルテにより可能になる数々の地域貢献プログラムを活用して、対象となる患者がケアを受けられるようにしています。
成功機会レポート(SOR)などの地域社会への貢献の活動は、患者にとっての障壁を明らかにし、ある診療グループの患者が何に成功しているかを把握します。この情報は他の診療グループと共有されます。慢性疾患の予防的看護/管理(POE)も使用し、ヘルスサービスや検査を必要とする人を見つけ出します。スタッフは、一人ひとりに何が必要かわかり、その他の部門に連絡することができます。これにより、コンプライアンスが促進され、複数のサービスをスケジュールすることにより、1回の施設訪問を最大限活用することができます。訪問後には要約が作成され、利用者はオンラインアクセスを使って自身のカルテのコメントを見ることができます。
施設の側から見れば、これには、登録ブースやカルテ入力用コンピュータなど技術デバイスのために適切なスペースが必要です(図16)。ロビーには登録ブースがあり、各検査室には、スタッフ使用を考え人間工学に基づき調節された手元に移動できるコンピュータがあります。ユニットが移動可能であると、医療情報入力に加えて、患者や家族との情報共有にも非常に便利です

図16 システムインテグレーション:登録ブースや検査室のポータブルコンピュータ・ワークステーションにより、スタッフや患者にとってEHR(電子健康記録)の使用が容易になります

意図的デザイン
具体的なデザイン機会に集中することにより、チームは同じコストでより多くを得ることができます。デザインは、一時的資本投資と長期的運転費用を比較、理解するため、全ライフサイクルコストに基づき繰り返し評価されました。

評価と教訓

アンテロープバレー・プロジェクトは意図的デザインを視点としています。KPが主催したかつての「小さな病院、大きな目的」コンペを振り返り、プロジェクトチームは、これまで機会を逃していて、同程度のコストでもっと革新的なデザインが作れたはずだと感じていました。デザインは、一時的資本投資と長期的運転費用を比較、理解するため、全ライフサイクルコストに基づき繰り返し評価されました。
サステナビリティの観点から、アンテロープバレー施設はエネルギー効率を最大限にするよう設計されました。コンサルタント・ウェブサイトの1つ(glumac.com)によれば、「エネルギー分析の結果、年間温水需要の72%を加熱する太陽熱回収システム設計にたどり着きました。できあがった建物は、一般的な医療用ビルより約36%エネルギー消費量が少なく、年間光熱費を約118,000ドル節約します。」低流量設備や二重配管システムに加えて、冷水使用削減のための気化熱利用冷却システムを使用することにより、高価値の水道水の年間使用量を550,000ガロン節約します。照明用エネルギーは54%削減されました。プロジェクトでは自然換気も検討されました。しかし、風とそれに伴うほこり、温度変化、地元で発生する山火事などの現実を鑑み、空気の質やエネルギー視点の非効率性を考えると、自然換気は問題があると判断されました。
成功の定量評価はさておき、スタッフおよびリーダーに話を聞くと、スタッフと患者両方の健康とウェルネスに等しく焦点を当てている点は明らかでした。コミュニティーが施設のデザインのいくつかの開発に参加したことにより、この施設は市のすばらしいランドマークとなりました。インタビューしたスタッフによれば、5年前に比べると、KPや地元に対する印象は良くなっているとのことです。また、かつては治療のためにはロサンゼルスまで行かなければならないという認識や、実際にその必要性がしばしばありました。今や、サービスはコミュニティーで受けることができます。多くの人が必要としていた専門的サービスがコミュニティーにあるので、患者は行動を起こしやすくなり、ケア・レジメンを守れるようになっています。
慢性疾患患者の利便性を考え、隣接性や移動距離が配慮された一方、整形外科エリアがエントランスから遠すぎるというのが一部のスタッフの感想です。また、機能を隣接させることにより、部門間のコミュニケーションが改善されたようでした。共通の作業空間は会議室です。近接性は、一般用トイレと冷水器についても問題です。1階フロアには一般用トイレが1ヵ所あります(2階には3ヵ所、3階には2ヵ所)が、処置スペースにトイレがない場合には、遠くまで移動しなければなりません。2階、3階には冷水器はありません。

また駐車場のほとんどはエントランスから遠いという印象です。その理由は、ADA駐車場をエントランス近くに用意するため、また電動車いす用の優先場所があるためです。最も離れた駐車場からエントランスまでの距離が過度に遠すぎないとしても、極端な暑さと風の中なら、患者やスタッフがひどく不満に感じるのも当然かもしれません。インタビューから得られた解決案として立体駐車場(ガレージ)もありましたが、このエリアにはありませんし、駐車料金も必要になるでしょう(こちらもこのエリアにはありません)。つまり、このエリアの文化的問題と実用性の間でバランスをとる必要があるということです。今後の開発の中で、こうしたオプションを検討する必要が出てくるかもしれません。
公衆衛生に直接関係しませんが、スタッフが気にする点はあります。受付を1ヵ所にまとめ、待合室を分散させるまでには時間がかかります。電子カルテは患者到着を知らせますが、患者が1階フロアの受付デスクから処置スペースまで移動するのに時間がかかるので時間差が生じます。消耗品の保管場所や、個人の持ち物を保管するロッカーがありません。スタッフが作業するエリアすべてにキャビネットがあるわけではないのです。
施設利用は拡大し続け、もうすでに、点滴センターでは時々スペースが足りなくなっているとのことでした。1日当たりの平均患者数が20~30人であるのに対し、椅子の数は7~12脚です。3階に予備室(内装なし)が少しあるので、将来的に拡張の余地はあります。患者が家族に付き添われて来る場合、その他の待合室も椅子が不足します。待つために必要な空間と、「待たせない」という運営目標との間でバランスをとる必要があります。患者に付き添う家族が検査室や処置室に入るケースや、カフェや中庭の癒し庭園など、他に待つための場所を用意できるか、考慮する必要があります。

結論

アンテロープバレー医療センターは、コミュニティーと関わり合い、健康とウェルネスを推進するというデザインを採用している点で著しく進んでいます。しかしながら、この施設はKPの既存のモデルのひとつにすぎません。例えば、マンハッタン・ビーチヘルスハブ・クリニック(図17)や、まだ開業していないボールドウィンヒルズ(共に南カリフォルニア)などのようなより新しい施設が、カイザーパーマネンテの新しい外来診療デザインの再考(RAD)コンセプトに基づいています。RADは、「生活統合」を通じて外来診療のやり方を考え直し、ケアの中心をコミュニティーに寄せようとする南カリフォルニアの取り組みです。初期報告では、アンテロープバレーに見られるコンセプトの多くがRADコンセプト採用施設で改善され、再評価されていることが容易に見て取れます。大規模組織の強みは、先行するプロジェクトから学習でき、進行中の資本イニシアチブでアイデアを試すことができる点です。

図17 マンハッタン・ビーチヘルスハブ・クリニック(画像提供KP)

プロジェクト・ファクトデータ

組織:カイザーパーマネンテ
施設:アンテロープバレー医療センター
所在地:615 W. Avenue L, Lancaster, CA93534
サービスエリア:ランカスター/パームデール
検査室/その他処置室数
検査室94部屋
主処置室3部屋
大部屋/病室点滴センター 大部屋と個室で合計15部屋
外来患者数:住民124,000人
総建築面積:136,581 平方フィート
認証:医療施設認定合同機構、LEEDプラチナ認証
建築の種類:新築
建設/改装終了年:2014年9月
建築会社:Taylor Design
グラフィック経験:ex;it/Selbert Perkins Design
契約業者:McCarthy
追加チームメンバー:dpb engineers、EPT Design、Glumac、SKA Design、東芝

本研究のために収集された情報は、現地視察時、クライアントと研究チーム観察により提供されました。スタッフ/リーダー・インタビューと現地視察はクレスギ財団により資金提供されました。


Center for Health Designはヘルスケアを進化させる

Center for Health Designは最善の医療サービス提供を進め、医療アウトカム、患者のケア経験、サービス提供者やスタッフの満足度と実績を改善するデザインの価値を実証する質の高い研究をヘルスケアリーダーに示し、力を与えます。
さらに詳しくはサイトをご覧ください。
https://www.healthdesign.org/

当レポートは、3部作です。1部はこちら。2部はこちら。

© Central Uni Co., Ltd. All Rights Reserved.