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モノ2022.03.11

ヘルスケア・アクセス/アウトカム改善のためのデザインソリューションカイザーパーマネンテ(1)

カリフォルニア州ランカスター、カイザーパーマネンテ・アンテロープバレー医療センターの公衆衛生に関するケーススタディー

内容項目
・同じあるいは同程度のコストで革新的デザインを達成する方法
・評価の高いコミュニティーランドマークを実現するためのデザイン
・コミュニティー型ケアにより患者利用およびケア・レジメン順守を改善する方法


本ケーススタディーはクレスギ財団の資金により実施されました。


探究、公衆衛生に関するケーススタディー

質問:医療機関は既存の建築環境を使ってより健康的な生活を促進することができるでしょうか
目標:作業効率を上げることにより、患者アクセス/フローを改善し、患者により良い時間を過ごしてもらうこと

ヘルスケア・アクセス/アウトカムを改善するためのハイインパクトのデザインソリューション
カリフォルニア州ランカスター、カイザーパーマネンテ・アンテロープバレー医療センター

背景

カイザーパーマネンテ(KP)は、カリフォルニア州オークランドを拠点とし、保険/ヘルスケア・サービスを提供する非営利の統合ヘルスケア提供機構です。1945年、事業家ヘンリー・J・カイザーと医師シドニー・ガーフィールドにより設立され、今日では、南北カリフォルニア、コロラド、ジョージア、ハワイ、中部大西洋沿岸からワシントンDCエリア、北西部(北西部オレゴン州、南西部ワシントン州)を含め、全米8地域で事業展開しています。患者ファーストのトータルヘルスのリーダーになることをビジョンとしています。メンバー月給制の財務モデルは、ウェルネスは収益性があるという前提にたっています。
アンテロープバレー地域はロサンゼルス盆地と比較して物価は安く、患者の大部分は固定収入で生活しています。2012年のコミュニティー・ヘルスニーズアセスメントによれば、人口の約41%が連邦貧困レベルの200%未満で生活しており、41%という数値は州/全国平均より高いレベルです。コミュニティーの多くの人々が慢性疾患を患い、調整後死亡/障害率も平均を上回ります。
アンテロープバレー医療センターの施設は、半ば郊外の砂漠地帯に位置する独立した、新しく建設された3階建ての建物です。ここでは専門的サービス(例えば点滴、薬局、検査室)が提供され、住民の慢性疾患(例えば肥満、糖尿病、がん)に対応しています。(プライマリーケアは、ランカスターおよびパームデールの医療センターで提供されます。)敷地面積44エーカーのこの場所のマスタープランでは、病院、中央電力設備、追加医療センターを含む追加の建物の可能性が示されていますが、今後の開発のタイムラインは示されていません。
2014年に開所したこの施設は、コミュニティーとサステナビリティに特に注目してデザインされ、LEEDプラチナ認証を受けました。

カイザーパーマネンテの2025年環境スチュワードシップ目標

気候へのアクション:十分なクリーンエネルギーやカーボンオフセットを購入することにより「カーボンネットポジティブ」を目指し、排出量を上回る温室効果ガスを大気中から除去します。

サステナブルフード:食品はすべて、地元から、あるいは責任ある抗生物質使用などサステナブルな農家や生産者から購入します。

ごみ削減:非有害ごみは100%リサイクル、リユース、あるいは堆肥にします。

水資源保護:使用する水の量を建物平方フィートあたり25%削減します。

安全な商品:環境基準を満たす商品および材料の購入を50%まで増加します。

サステナビリティの維持:私たちの病院すべてで環境維持の国際基準を満たします。

協同:私たちのコミュニティーに流入する水、空気、流通する食品への環境リスクを削減するための新しい協同を模索します。

キーデザインとオペレーション戦略

アンテロープバレー医療センターのデザイン時、カイザーパーマネンテは「意図的」デザインを明確に目指しました。コストを増やさず多くを獲得するためのチャンスとしてデザインを活用したわけです。施設デザインの優先事項を市の環境サステナビリティ目標と一致させ、コミュニティーニーズを支援するための専門的サービスにフォーカスすることによりケア・アクセスを改善し、患者やスタッフのウェルネス経験を高めようとしました。

サステナブルなデザイン
ランカスター市は、ロサンゼルスの北110キロメートルの半ば郊外エリアに位置し、いくぶん厳しい気候で知られています。風(秒速40メートル)、日照(年間281日間)、極端な気温(摂氏でマイナス17℃からプラス43℃)です。太陽光と風力エネルギーの中心地であり、市は1990年代半ば以降サステナビリティを優先事項としてきました。区切りとなる2011年、市はネットゼロエネルギー・シティー第1号になる目標をたてました。市域内の消費量以上の電力を再生可能エネルギー源から生産、調達しようとする試みです。
市のサステナビリティ目標は、健全な環境がコミュニティーや個人の健康やウェルネスにとり非常に重要であるとするKPの考え方と一致しました。これには環境スチュワードシップに向けた大規模な取り組みが含まれます(2025年目標については上図参照)。

気候とサステナビリティに対応するものとして、おそらくアンテロープバレー・プロジェクトの最も視覚的に際立つデザイン特長のひとつが、L大通りに面する波打つカーテンウォールです(図1)。美観をねらったものだと言う人がいるかもしれませんが、この建物正面の形状と角度は、強風の影響を最小限に抑え、熱を和らげるためのものであり、コンピュータによる流体力学計算に基づく大規模建築構成/配置の結果でした。

図1 波打つカーテンウォール

目を引くもう1つのデザイン特長が、停車レーンと建物エントランスに沿った干ばつ耐性植物の緑による「生きている」壁です(図2)。緑の壁はしばしば建物を熱から保護し、舗装エリアのヒートアイランド効果を和らげ、視覚的な興味をそそります。この場所では、緑の壁は、砂漠の過酷な環境になってしまうところに自然とのつながりを作ってくれます。
サステナビリティ戦略には、自然光を多く取り込むための中庭の使用(図3)、中庭の池を利用した気化冷却、施設内部の「反射光/間接光」の使用、昼間のエネルギー使用を減らすための光センサの天井設置、遮熱・遮光のための自動電動ウインドウシェード、リクレームドウッド(木の再生利用)、断熱カーテンウォール、トイレや庭散水用の再生水も含まれます。太陽光エネルギーが使用され、メインロビーの大型インタラクティブスクリーンをタッチすればリアルタイムで提供されます(図4)。

図2 生きている「緑」の壁
図3 中庭と水の使用(画像提供KP)

当レポートは、3部作です。2部はこちら。3部はこちら。

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