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モノ2022.03.11

ヘルスケア・アクセス/アウトカム改善のためのデザインソリューションカイザーパーマネンテ(2)

デザインへのコミュニティーの関与

図4 インタラクティブデジタルディスプレイに表示されるリアルタイムのエネルギー使用

デザインプロセスには、この場所の意味を理解してもらうためにコミュニティーの参加を求めました。ポピーと蝶の大きなグラフィックはコミュニティーの歴史に由来します。このエリアは春には輝くようなポピーの大群落で知られ(州の花)、ポピー・フェスティバルが毎年開催されます。コミュニティーは飛行機とも縁があります(モハーヴェ砂漠のエドワーズ空軍基地と国立テストパイロット養成学校)。蝶は、飛行機を連想させるものであると同時に、変化も表しています。ポピーと蝶は、建物内部、外部両方に繰り返し使われているモチーフであり、あちこちに遊び心があふれる彫刻もあります(図5)。
このエリアに住む人はこの施設を「蝶のビル」と呼び、地元のランドマークになりました。それにより、KPヘルスサービスがこのエリアにあると人々に知らしめることになりました。

図5 施設や敷地のあちこちで見られる蝶とポピーのモチーフの例

コミュニティーの関与
アンテロープバレー医療センターは、ターゲットとするサービスとソリューションを決定するためにデザインチームが積極的にコミュニティーのヘルスデータを使用したカイザーパーマネンテの最初のプロジェクトのひとつです。

コミュニティーに親しみのあるイメージをアートにしたものが施設全体に広く使用されています。また、コミュニティーは施設内空間のためのアート作成にも関与しました。例えば、子供のアート作品は地元のYMCAとともに作成しました(図6)。これらは、中庭から薬局・検査室近くの人通りが多いエリアに展示されています。

コミュニティー人口統計に対応
デザイン時、チームは、ロサンゼルスカウンティの公衆衛生主要健康指標部門を利用して、コミュニティーの健康状況と住民の社会経済学的状況(高い肥満率、高い障害率、低/固定所得など)を把握しました。この分析に基づき、コミュニティーの需要に応えるための複数のデザイン戦略を実行しました。コミュニティー住民の慢性的な病状に対処するため、施設は、一般外科、点滴/化学療法、物理/作業療法、がん/血液疾患、聴覚、整形外科、循環器科を含む約20の専門分野サービスを提供します。

図6 地元YMCAのキッズ・プログラムによるコミュニティー住民の手によるアート
図7 アンテロープバレー医療センター敷地図

敷地図(図7)から見て取れるデザインソリューションは、(1)敷地付近にバス停を配置するなどの公共交通機関へのアクセス、(2)自動車、バス/バンなど輸送サービスのための広い停車エリア(図8)、(3)ADA(障害を持つアメリカ人法)に準拠する、施設そばの駐車スペース増設です。(敷地内には、ADAスペースで求められる2~3倍のスペースがあり、将来的なサービス需要の増加を見込んでいます。)

図8 患者のための停車エリア

コミュニティー住民の需要に応えるために、いくつかのエリアでインテリアデザイン戦略も実施されました。例えば、施設機能を隣接させることにより、物理/作業療法に来る患者はエントランスからリハビリジム(A)まで長距離を歩くことはありません。(B)で行われる画像撮影などの共通サービスは、(C)の物理療法、(D)の足治療/整形外科近くにまとめました(図9)。診察予約と関係なく訪れる場合もある薬局(E)や検査室(F)など、その他のサービスもエントランス近くに配置されました。

図9 アンテロープバレー医療センター1階平面図

統合医療チームを支えるためにポッド(豆のさやの意)型デザインを使用することもある患者中心の医療施設とは異なり、アンテロープバレーで提供される専門的サービスは、エリアとフロアにより区画された伝統的な診療科モデルです。一般患者エリア(待合室)は、景色が見えて日が差し込む建物周縁部に位置し、スタッフ事務室や処置室は建物内部にあります。点滴センターは眺めのよい場所で、例外は、患者が光に敏感な眼科というのが通常です。ですからこのモデルは逆です。
コミュニティーには肥満患者が多いため、法律の定める規定10%を超えて肥満患者用室内備品を用意する決断をしました。備品のうち最大50%が肥満患者に対応しています。施設内ではポータブルリフトが使用でき、スタッフが患者に応対する際、リフト技術者が支援します。診察室や処置室は法律の定める規定より広く、大型備品が収容でき、慢性疾患患者に付き添う家族やその他介護者をサポートできます。

運動の促進
施設が位置するエリアは、誰もがよく歩くコミュニティーとは言えません。運動を促進するため、KPは建物周囲に2つの距離表示付きのウォーキングトレイルを用意しました(図10)。やる気を起こさせる名言や蝶をルートに刻み、自己反省と発見のきっかけを作っています。夜間は照明で明るく、街路歩道にもつながっています。街路歩道と施設の間に障壁となるフェンスはありません(図11)。土、砂利、コンクリート、木材など様々な舗装素材が使用されています。

図10 施設周囲にある距離表示付きウォーキングトレイル
図11 街路歩道につながり、照明により明るい歩道

温度差が激しく風が強いために、冬と夏の使用は減りますが、スタッフの報告によれば、犬の散歩や運動のためにウォーキングトレイルを利用する人は多いようです。スタッフやコミュニティー住民が夜間や週末にウォーキングトレイルを利用する姿が見られます。
施設事業としては、これらのウォーキングトレイルは「ドクターと歩こう」などのプログラムに使用されています(図12)。健康的なライフスタイルのメリットについての情報収集や、ヘルスニーズに関する質問機会として、KPメンバーやコミュニティー住民を招いてドクターとウォーキングします。

図12 「ドクターと歩こう」プログラム(画像はAV Timesウェブサイトより)
図13 屋外円形劇場(画像はMonarch Aerialsウェブサイトより)

屋外スペースには、解放的/閉鎖的どちらにも座れるエリアがあり、円形劇場は屋外プレゼンテーションやイベントに使用されます(図13)。駐輪施設も用意されていますが、メインエントランスの隣ではありません。主としてスタッフが利用します。
建物内は、メインロビーから2階フロアへの通路階段がわかりやすく配置され、利用しやすくなっています(図14)。階段は光があふれ、利用を促す設計です。

図14 メインロビー通路階段

法律の規制では通路階段を3階フロアまで延長する必要はないとしていました。しかし、非常階段について言えばこちらも自然光を取り入れた設計であり、実用本位でありながらも、通常の非常階段よりずっと人目に付きます。

健康的な食を促進する
施設では健康的な食事の促進も目指し、屋外にはファーマーズマーケットのスペースがあります。条件が厳しいため、現時点では本格的なマーケットではありませんが、有機栽培農家と消費者を結ぶデリバリサービスであるAbundant Harvest(CSA[地域支援型農業]のようなもの)のピックアップポイントになっています。ここが、スタッフとコミュニティー住民両方の健康的な食を支えています。最近実施されたプログラムでは、21日間植物性食品中心の生活にチャレンジしました。施設内カフェ(スタッフ、患者、来訪者が使用)と自動販売機でも、健康的な食品(ケーキやキャンディーやソーダが無い)を取り扱うという方針です。

地域社会への貢献としての施設使用
医師は、中学生に医療に興味を持ってもらうための一連のイベントであるヒポクラテス・サークルプログラムを通して、コミュニティーの若者と交流しています。学生は医師の引率でアンテロープバレー医療センターや医学部を見学した後、各自プログラムの修了証書を受け取ります。

1階フロアエントランスにある会議室を使って別の教育活動も行われます(図15)。公開されている年1回の会議もあります。夜間、会議室は他の施設部分とは切り離して閉鎖でき、また前述のように、屋外集会スペースに隣接しています。
建物内では、KPが作成した教育資材を使用するための壁掛けテレビがあります。これを使って、インフルエンザ予防接種の重要性や一般健康情報など、季節の情報を取り上げることができます。

図15 会議室

当レポートは、3部作です。1部はこちら。3部はこちら。

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