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コト2020.09.10

自分自身を満たし支え合う居場所づくり。 互いの存在を見つめなおす看護師オンラインコミュニティ「縁JOYナース部」‐前半

職場への満足度の低さから離職率が高い職種と言われている看護師。資格を所有していても看護師として働いていない「潜在看護師」や、患者さんのケアに集中することで自分自身の心や体調を崩してしまう方もいるそう。

また、「悩みを伝える場がない」ことや「悩みを相談できる相手がいない」ことも、離職につながっています。

こういった看護師が共通で抱いている悩みや問題意識を共有するオンラインコミュニティが「縁JOYナース部」です。運営をする町田さん林崎さんは、全国各地の看護師同士が話し合う場、人脈やスキル、機会を得る橋渡しとしてコミュニティを築いてきました。 「自分たちも成長しながら、皆で高め合うような環境が欲しい」と思い始めて約3年間、彼女たちはどのような道のりを歩んできたのでしょうか。現在の看護業界が抱える課題とともにお聞きしました。


町田舞

町田 舞(まちだ まい)

SEから看護師を経てフリーランスに。
IT/ウェブ/SNSを駆使しながらオンラインからオフラインへとあらゆるヒト・モノ・コトの橋渡しを行う、縁つなぎがライフワークのIT×ナース。
「誰もが自分らしく輝ける未来・社会を創ること」を目標に、職域や組織“だけ”に縛られずに人と人が相互につながり支え合える包括的な社会づくりを目指し、医療・福祉・地域への貢献を軸に活動している。

林崎 彩香(はやしざき あやか)

ゆる活ナースayaka。 合同会社nurseroom代表。看護師ブロガーの先駆けとして有名となり、SNSインフルエンサー・youtuberとして活躍。看護師が幸せに働くためのメンタル・キャリア創造を支援するエンパワーメント事業としてnurseroomを設立。周りのモチベーションを底上げするムードメーカー。


看護業界に潜む課題

まず二人にお聞きしたのは、仕事や職場を含めて看護師を取り囲む環境について。「何かを変えたい、成長したい」と強い想いを持つ看護師でさえ悩んでしまうこともあるそうです。

林崎さん

“看護師は忙しいので職場と家の往復だけになってしまい、出会う人や情報の幅がなく、視野が狭くなってしまうというのがひとつの問題です。すると、相談できる相手も限られてしまう。例えば、転職の相談がしたいのに、相手が転職を一度もしたことがないケースも多々あります。

そして、その病院が本人に合う合わないの判断をすることなく働き続けてしまい心を病んでしまう。看護業界は他業界よりも、かなり閉じられた世界なのかもしれません。一般的には職場環境を外の人に相談することにハードルはあまりないことですが、相談してくれる人がいるという情報すら看護師には届かない。

当人は人に対しての貢献心はすごくあっても、自分の時間をつくることに不慣れです。本当は自分がどういう道にいたいかが分からない。また、看護師になること自体をゴールにしていた人もいます。”

町田さん

“私は社会人を経由して看護業界に入ってきました。そのためか、医療業界がすごく閉鎖的な環境だと感じ、「みんなが優しい人だけどすごく疲れているな」や「なんか違うな、何で看護師さんが幸せそうでないのだろうな」と思っていました。

たとえ自分たちの働き方や医療のあり方に違和感や理不尽さを感じていても、「こんなもんでしょ」「仕方ない」といった諦めオーラがあったりもしました。

元々は優しく思いやりがあって看護師になろうとした人が、結果として疲弊して辞めてしまう世界はおかしいと日々感じていました。”

患者さんのことを一生懸命考える看護師も、自分の人生について計画を立てて深く考える時間があまり取れない。看護師になることがゴールになってしまっている人は特に、就職してから理想と現実のギャップに戸惑い離職してしまうのだとか。

優しさにあふれて看護師になろうとした人が辞めてしまう世界、何よりも悲しいことは「人に優しくできない自分を嫌悪する」こと。

林崎さんはかつて、「同僚の妊娠を素直に喜んであげられない」経験をしたそうです。本当は素直に喜んであげたくても、一度に二人が産休に入ると業務が回らず職場の雰囲気がピリついてしまう。そんな時に申し訳なさと不甲斐なさを感じてしまうことがあるのです。

また、もうひとつ課題にあがったのが、看護の仕事は頑張りが可視化されないこと。

患者さんの口腔ケアをどこまで丁寧にするか、少しだけ汚れてしまった衣服をどこまで替えてあげられるか。基準が明確に記されてない仕事がほんとど。貢献心の強い人は少しでも衣服が濡れていたら「可哀想だから替えてあげなきゃ」と思い行動しますが、一方で「このくらい大丈夫でしょ」と言う人もいます。

どちらが良いのかの正解もないですし、少ない人事体制で回している中、ちょっとした業務を行うことが正しいかどうかも分からない。「私は看護がしたくて看護師になったはずなのに、業務に追われて人に優しくできなくて、なんのために働き始めたのか分からない」と言いながら看護を求めて病院を辞めていく方もいるそうです。

ポンコツでも愛される場

医療と医療者のあり方に疑問をもち組織を一度離れた町田さんは、多様なつながりを求め多くの人と会いましたが、その中で「病院以外で看護師に出逢えない・出逢わない」ことに気づきます。そんな中で出逢ったのが林崎さんでした。

林崎さんは看護師として最初に就職した現場で過労し、自殺を考えるほど追い込まれました。2年間務めた後に辞めて、別の病院への転職後に、同じように苦しんでいる看護師の友達に向けてブログを書き始めたのです。

二人は看護師向けのセミナーで出会い、「看護師だけの飲み会を開いたら面白いかも」という話の流れになり、その時に閃きでつけたイベント名が「縁JOYナース会」だったそう。徐々に地方からの参加者が集まり、月1回のペースでモヤモヤを吐き出す飲み会を開催するようになりました。ブログやSNSの読者やフォロワーの存在が追い風になり発展したのが縁JOYナース部です。

都内でのJOYナース部の飲み会の様子

さらに、活動を続けることでSNSで名前が知られるようになると、「ナースフェス」という数千人単位の看護師を集めたイベントで実行委員を務めることになりました。

やがて、オンラインコミュニティを運営するようになりました。

林崎さん

“北海道から沖縄まで実際に足を運んで会った人から声を掛けていましたが、初めのうちは「オンラインコミュニティは怪しい」と言われたり、「そもそもオンラインコミュニティとは何か」という疑問を持たれました。”

町田さん

“「普通にそこに居るだけで褒め合える場所」「ひとりの人間としてポンコツでも愛される場」を自分たち自身がずっと欲してたのかも。存在を温かく受容してくれる場を縁JOYナース部で実現するのは、他でもなく過去の自分たちを救済しているのだと、思っています。”

看護師の出会う場所をつくり、一人ひとりと丁寧に関係性を育むことで発展してきた「縁JOYナース部」。ここまでは、彼女たちの発足当時の話を中心にお聞きしてきました。

後半では、現在と未来の活動について伺います。

 

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