看護師が抱いている悩みや問題意識を共有するオンラインコミュニティ「縁JOYナース部」。
前半では、運営者である町田さんと林崎さんから発足当時のお話を伺いました。
丁寧に関係性を紡ぐことで少しづつ共感する仲間を増やしていったプロセス、「なぜ看護ができなくて看護師が辞めていくのか」という矛盾に向き合う姿勢、そして自分たちのできることから実践したたことが現在のコミュニティの発展に結びついています。
さて、後半では現在の活動の具体的な内容や今後の展望についてお聞きしています。
第1歩を踏み出せる挑戦のコミュニティ
現在の活動を話す中で、二人は自分たちの存在を「登山部」や「道先案内人」と表現しています。
林崎さん
“「自分も楽しくなりたい」が人のモチベーションや原動力になります。病気の人にも「こうなれる」と希望を持たせてあげる言葉を明るく言ってあげられる人がいてもいいのではないか、と。「病気だからこれに気をつけよう、あれに気をつけよう」だけではなく、「これやってみようか」から変わっていくのをあります。自分はどちらかと言うと周りを盛り上げる「登山部」のポジションを意識しています。”
町田さん
“私は基本的に前提としての姿勢は伝えることは大事にしています。結局人は自分でスイッチが入らないと変わらないですし、そのスイッチさえ入れば勝手に動いていくので、私の場合はきっかけやヒント、またそこに行くための誰かとの橋渡しをする「道先案内人」のようなポジションですね。”
「盛り上げて導く登山部」と「山道の途中にある案内所」、アプローチの異なる二人がメンバーと接する上で大事にしていることをそれぞれこう語ります。
林崎さん
“「自分で決めさせること」をメンバーと接する上で大事にしています。自分から知りたいと欲したもの以外はもうあげないくらいのテンションです。何かをやってあげることがその人の幸せになると思ったことがないので、「やってあげよう」としないことをモットーに生きています。私自身、自分でできる喜びや自分で選んだことが何か結果になった時に自信がついたり達成感を得る経験が多いからでしょうか…。”
町田さん
“「縁JOYナース部」は正解を教える場所ではない。「そもそもこの世の中に正解はないからね」ということは私も言っています。「自分で自分に合った場所を選ぶんだよ」ということは言いながら、ヒントや選択肢は見せ、「1~10までの知っていることは全部教えるけれどもあなたには11番の「選ばない」という選択肢もある」と伝えたりします。”
二人のスタンスは共通して、決して押し付けないこと。そして、何事も経験をしないとずっと憧れを置いたままになってしまう。「やってみれば良かったな」という後悔を抱えて生きるより、とりあえずやってみる。縁JOYナース部は、その第1歩を踏み出せる挑戦のコミュニティです。
林崎さん
“縁JOYナース部のメンバーには、昔と全く違う表情の人が沢山います。”
メンバー自身は必死に楽しくなっている分、日々の変化を感じていない。それでも他者から見ると、変化するのが目に見えて分かるようそうで、メンバーの表情が生き生きと変わっていくことを見る時、「すごく頑張り過ぎていた人が少し幸せになってきたかも」と感じて二人も嬉しくなるそうです。

人生全部コンテンツにしよう
「楽しんだ者勝ち」。みなさんも一度は聞いたことがあるフレーズかもしれませんが、「縁JOYナース部」を運営する二人にも“楽しむ”ことを大切に行動をしています。それは、二人が共通して話してくれた「人生全部コンテンツにしよう」という想いを生み、実際に失敗や成功よりも人生を一生懸命に楽しんでいるかどうかを意識しているそうです。
林崎さん
“自分を幸せにすることはひとりひとりの義務です。周りに言われたからって選択肢を変えて人のせいにしている方がよっぽど無責任。自分で選べる人間の方が格好いいですし、私は先日子供が生まれたのですが「お母さん楽しそうだな、大人っていいな」と思ってもらいたい。”
町田さん
“人もコミュニティも生きている。まっすぐ進むのではなく、森のように育っていくものだと思います。根っこがしっかりしていて、土も段々と肥えてきて、その上に木々が生い茂っていれば、簡単には崩れない。でも実際には、根や幹が弱いままなのに、最初から花や実を求めてギャップに苦しみ折れてしまう人が多いんですよね。そして、ひとりで立派な木になろうとしてしまう。森は、違う植物や動物が集まりますので実を分け合います。リンゴだけが1000個あっても困るのでシェアして交換していたら色々な人が集まってくる。そんな風に、私たちは「誰かが不調の時は別の人が助け、助け合う」ことをベースに持っています。だからこそ、自分にないスキルや人脈を補い合い、互いに成長する関係性ができてくるのです。”
そして、今後の展望について、二人はこう語ります。
林崎さん
“「自分自身は何が幸せか」とか「いかに無理をせず、自分も他人も楽しく生きられるか」ということを追及していきたい。そしてそれを発信し続けたいです。私はこれから子育てがメインの生活になりますが、その経験も活かしながら看護業界でもできることをやっていきたいです。今まではひとりで自由に動ける身体でしたが、これからは短い時間をどう工夫するかを考えています。「短い時間でもできることがあるよね」と発信し、お母さんたちに諦めないで欲しいです。”
町田さん
“少し抽象度が高い話かもしれませんが、社会をもっと個人個人にとって生きやすい場所にしていきたいです。誰もが自分に合う場所や自分らしく輝ける未来や社会をつくりたいという想いがずっと根底にあります。みんなで「助け合おう」と言い合えて、「ありがとう」や「ごめんなさい」が言える。
「私これに困っています」「わたしはそれが得意だからやります」「それでは代わりにこれをお返しします」と言い合える感謝の連鎖が起こる社会になってほしい。そういった観点で、今は地域の福祉などに目を向けて何かつながりをつくりたいです。”

職場や生活における辛い環境を嘆くだけ、あるいは疑問をそのまま放置するのではなく、価値を変えるチャンスと捉えて送る人生は「面白いコンテンツ」になっていくもの。自分が幸せになることを忘れてしまっては、人に元気や勇気を与えることも難しくなる。
ゴールを定めた瞬間に始まる人生は、転んでは起き上がりの連続…。けれども、成長の過程すら楽しみながら自分らしく生きることが結果的には誰かを幸せにするエネルギーになっていくのだと感じています。
「縁JOYナース部」のような支え合えるコミュニティがあるからこそ、安心して個々が自立できるのではないでしょうか。