CLOSE

MAGAZINE

HOME > MAGAZINE > 「センター・フォア・ヘルスデザインにおける施主側の見解」
コト2020.08.20

Built Environment Network メンバー 「センター・フォア・ヘルスデザインにおける施主側の見解」

「The Owners perspective:  Key Insights Impacting the Future of Healthcare Design and Construction」というセッションは、医療機関側からの観点を議論するセッションです。Built Environment Network(BEN)というグループに属するメンバーの一部が登壇しました。

BENはセンター・フォア・ヘルスデザインのメンバーから構成されており、毎年3回集まって医療機関の訪問や、知識の交換、業界の課題の議論などをしています。メンバーは大規模な大学病院から小規模なクリニックまで様々で、主に施設担当者が加入。このセッションは、HCDにおける施主側の見解を知る貴重な機会でした。

最初に、BENが2019年に訪問した3つの医療機関が紹介されました。訪問先は、まずテーマを挙げてそれに合う場所が選ばれます。今回は、コマンドセンターを見るためにボルティモアのジョンズホプキンズ大学病院と、デザインや建設のプロセスの変化を見るためにミルウォーキーのオーロラ医療システムと、そして消音技術を学ぶためにニューヨークのマンメイドミュージックという会社を訪ね、さらにメモリアル・スローンケタリング病院の新しいがんセンターも訪問しました。

その後は、この業界で起こっている変化についてプレゼンテーションと議論が行われました。登壇各者に共通していたテーマは効率化です。発言からいくつかを紹介しましょう。

まず、ボルト社というゼネコンからウィル・リクティグ氏が、この業界の問題点を指摘しました。デジタルテクノロジーの受容度が低いこと、建設に関わる各業種が分散してそれぞれがサイロ化していることが生産効率を下げていることなどです。また、労働と材料で無駄が多いという課題はデザインと建設の両方で起こっていると言います。

医療機関を対象にした調査によると、予算のオーバーが10%以内で実現したプロジェクトは31%に過ぎず、53%の施主は質とコスト、スケジュール面で結果が期待以下であるとしています。そして、43%の施主がより統合型の建設実施(IPD)を求めています。つまり、建設に際して異なったアプローチが取れないかと自問する医療機関が多いということです。その上で同氏は、プレファブやサブ・アッセンブリー、モデュール化など、建設を効率化する手法について解説を加えました。

年間30〜40億ドルを施設の建設に費やす大手医療機関カイザー・パーマネンテのドン・オーンドフ氏は、同機関が病院デザインのテンプレート化を進めている状況を細かく説明しました。テンプレート化は、建設を速く、良質に、安価に実現することが目的です。

カイザー・パーマネンテにはすでにデザイン・ガイドラインが確立されています。それに従って作られた部屋のテンプレートが、外来病院用に104種、入院病棟用に106種あり、用途によって組み合わせる方法で設計が行われます。

テンプレートはさらに、薬局、検査室などの部署レベルのものに拡大し、最終的には病院全体をバーチャルに自動化して組み上げることができるシステムになっています。これまで蓄積された知識をもとに、現在ではエンドユーザーのリサーチを最小限にして病院の設計ができる仕組みです。

この他にも、国防総省医療局のネイト・プライス大尉も多くの医療施設を標準化する努力について述べました。メトロヘルスのウォルター・ジョーンズ氏は、「デザイン・ニュートラル」という言葉を用いて、長期的にどんな用途に利用しても建物が障害にならないような施設デザインが求められるとしました。

このセッションは、将来の建築家やデザイナーの役割を問い直すものでもあります。登壇者らはディテールにこだわる時間は有効でなく、それよりも先端的なテクノロジーの導入が優先されるべきだと言います。ただ、医師や患者などからの意見も重要で、彼らの意見と効率的な建設をつなぐ役割が今後求められるのかもしれません。

© Central Uni Co., Ltd. All Rights Reserved.